中国に甘い顔を見せるべきではないはず

東京五輪の開会式の際、中国は、日本がアメリカと同様に台湾を支持していることから、副首相級の派遣を見送り、代わりに中国代表団団長の国家体育総局長(閣僚級)を出席させた。この対応を踏まえて、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長やスポーツ庁の室伏広治長官が派遣の候補に挙がっている。

さらには東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長の名前も浮上。橋下氏は政府高官ではないため、外交的ボイコットを表明しているアメリカやイギリスなどの批判を避けられる。しかも現職の国会議員であることから中国側の面子も立つ。

衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相(中央)=2021年12月13日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相(中央)=2021年12月13日、国会内

しかし、アメリカやイギリスなどに配慮しながら、中国にもいい顔をするのは無理である。岸田首相は検討にこれ以上、時間をかけるべきではない。欧米各国が次々と外交的ボイコットを表明しているなか、判断が遅れるほど日本の優柔不断が際立つ。それは国益を損ねる行為だ。

中国の専制主義や覇権的行動、強権姿勢、人権侵害を考え合わせれば、答えはひとつだ。中国に甘い顔を見せてはならない。日本はできる限り早く、外交的ボイコットを表明すべきである。

五輪を政治利用しようとしているのは習近平政権

外交的ボイコットに中国は猛反発している。

相手を攻撃して強く罵る「戦狼外交」で知られる、中国外務省の趙立堅(ジャオ・リージエン)副報道局長は7日の定例記者会見でこう力説した。

「強い不満と断固たる反対を表明し、対抗措置を取る。アメリカの行動は誤っている。必ずや代償を払うことになる」
「アメリカはスポーツを政治問題化している。オリンピックに対する干渉を中止しなければ、中国とアメリカが国際社会や経済的分野で行っている対話や協力関係は無駄になる」

いつものことではあるが、よくもまあここまで御託を並べられるものだ。誤っているのは中国の習近平(シー・チンピン)政権であり、外交的ボイコットはその報いだろう。オリンピックを政治利用しようとしているのは、習近平政権である。今回の問題に国際社会や経済的分野での協力を持ち出すのも軽薄な脅しにすぎない。