一度入居させたら終了、はゴミ扱いと一緒
話を転ホームに戻します。私は次のような流れがベストだと考えています。
認知症状の悪化によって問題行動が発生し、自分たちの生活が脅かされてきた→認知症状への対応が得意なホームに入居→ADLの低下(身体機能の衰え)により認知症状による問題行動が消失→生活機能の向上が得意なホームに転ホーム→その甲斐もなく寝たきり状態に→自宅へ。というような流れになると思います。
または、寝たきりの状態から看取り期に入った場合、自宅から改めて老人ホームへ転ホームするという流れもあると思います。
親を老人ホームに一度入居させたら、それで終了。という発想は、親を捨てているのと同じです。私は、こんな現象を見ていると、老人ホームはゴミの処分場と同じであると、言わざるをえません。なぜなら、「一度入れたら、死ぬまで放置」ということだからです。もし、親はゴミではない、というのであれば、ぜひ、親の状態に合わせて、最も適切なホームを探すという行為をしてほしいと思います。
洋服や家のように老人ホームを住み替える
今は、私が介護職員をしていた時と比較しても、入居一時金の不要なホームがたくさんあります。つまり、「転ホーム」をすることに、躊躇する環境は、かなり改善されているはずなのです。
毎年洋服を買い替える人は、たくさんいます。体形が変化してサイズが合わなくなれば、買い替えざるをえません。家だって、家族構成が変わったり、収入が増えたり減ったりすれば、買え替えたり、建て替えたり、引っ越したりします。
なぜ、親の老人ホームだけは、それをしないのでしょうか? 面倒だから? もしそう考えているのであれば、考えを変えて、「本当の親孝行をしてください」と言いたいのです。そのためには、少しだけ自分の時間を使って、老人ホームのことを考えたり、勉強してほしいと思います。
親の状態変化に合わせてホームを住み替えること。これが「転ホーム」です。しかし、みなさんにはこんな疑問もあるでしょう。「1、2年で何度も転ホームをすることは、不経済ではないのですか?」「ぎりぎりまで待って、老人ホームに入居をした場合、死に向かって衰えていく高齢者を次のホームに移すことは本当に良いことなのだろうか?」と。