※本稿は、小嶋勝利『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
子どもを絶望させる問題行動は徐々に消えていく
これからの老人ホームを考えたとき、「転ホーム」という選択が大切になってきます。多くのケースで、子世代が親を老人ホームに入れる決断をするタイミングは、認知症による問題行動が動機になっているはずです。細かい話をすれば、親の排せつ障害です。これが老人ホームへの入居を考えるスイッチの一つでしょう。しかし、逆に言うと、これ以外の理由で親の在宅生活に絶望することは、そう多くはないはずです。
この場合、認知症対応が得意なホームを探すということになるはずです。だからというわけではありませんが、多くの老人ホームは「認知症なら当ホームへ」といったうたい文句が、パンフレットに踊っています。ですから、それほど困らずに老人ホームを見つけ出すことができるはずです。認知症で問題行動を起こす親が老人ホームに入居さえしてしまえば、家族にとって、また、平穏な日常が戻ってくるのです。
多くの認知症高齢者の場合、短ければ数カ月以内、長くても数年以内に、実は問題行動は消失していきます。理由は、ADLが徐々に低下していくからです。
ADLとは、日常生活動作のこと。簡単に言えば、日常生活を送るために必要な機能のことを言います。排せつや入浴、食事、着替えなどが代表的な日常動作に当たります。それまで、元気にホームの廊下を徘徊していた認知症入居者のADLが低下していって、やがて、足腰が弱くなり、車いすでの生活が始まります。さらに、ADLが落ちていくと、ベッド上で過ごす時間が長くなります。多くの高齢者は、このプロセスを踏んで、徐々に寝たきり状態になっていくのです。