必要なのは経営危機にある業種・業態に対する支援策
私自身は、昨年春の段階では家計への一律給付や企業・個人事業主への持続化給付金支給を急ぐべきだと主張していた。コロナショックの影響がどこにどのように及ぶのか、その詳細が明らかではなかったためだ。
どの部門、その産業に支援が必要かはわからないが、経済に甚大なダメージが予想されるというとき――拙速を恐れない広く・浅い給付が次善の策となる。しかし、2021年も残り2月少々となった今、一律給付型の政策を優先する合理的な根拠は見当たらない。
各方面に物議をかもした矢野氏の記事ではあるが、メディアの着眼点を変えたことを通じ、むしろ広く・浅い(ばらまきとの批判があり得る)政策公約への注目を高める結果になったのではないだろうか。
そして、有権者の意識がこれらの広く・浅い給付に注がれたことは、選挙後の政策において同種の政策実施を急がざるを得ない政治状況をつくるだろう。コロナショックで深刻な経営危機にある業種・業態にとって喫緊の支援が劣後することは、コロナ後の回復の足取りを重いものにするだろう。ここに本当の危機がある。