「広く浅くタイプ」の政策はコロナ対策として効果が低い

一律給付に代表される恩恵が広く浅く国民に及ぶ政策は、今次のコロナショックへの対応としては、相対的に効果が低い。コロナショックによる売上・利益の変化について業界差があまりにも大きいことがその理由だ。

『法人企業統計』によると、2020年4月から2021年6月までの経常利益はコロナ前(2017–19年平均)に比べ全産業平均で3.3%ほど減少したに過ぎない。一方で、宿泊業の平均経常利益はマイナス410%減(赤字転落した上に、以前の黒字額の3倍に相当する赤字が発生している)、飲食サービス業でマイナス270%、生活関連サービス業でマイナス180%……一部業界に被害が集中しているのだ。

ちなみに2021年4–6月の経常利益は平均値ではコロナ前の水準を上回っている。経済的な意味でのコロナショックは特定の業界に集中している。広く浅い支援でこれらの業界の経営の継続をはかることはできない。

一律給付金の効果は薄い

このように書くと、一律給付によって余裕資金を得た多くの国民が旅行に行き、外食をすることを通じて苦境にある業界の利益を増加させるという反論があるかもしれない。しかし、一律給付金のほとんどは消費に回らない。

昨年行われた一人10万円の一律給付の影響を見るには『家計調査』を用いるのが良いだろう(以下、データの詳細はnote記事「経済学っぽい議論の進め方と一律給付金」を参照)。家計の収入と支出の動向を見ると、平均的な勤労者世帯は24万円の給付金を受け取っている。

販売台帳に記入する日本人女性
写真=iStock.com/kazuma seki
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一方で、給付による消費の増加は3万円(かなり多めに見積もっても5万円)ほどに過ぎない。つまりは給付金の内消費に回ったのは10–20%程度というわけだ。また「家計調査」の都市別データを用いた分析においても、消費刺激の大きさは給付金の11%前後であるとしている。

加えて、消費の増加は耐久消費財や電化製品、通販での商品購入が中心で、サービスにはほどんどまわっていない。広く浅い給付は経営危機に陥っている業界にとって友好な救済策とはなり得ない。