戦後最高の総理大臣とはいったいだれだろうか。憲政史家の倉山満さんは「それは池田勇人だろう。最近は田中角栄の人気が高いが、田中は高度経済成長の遺産を食いつぶしただけの無能な政治家だ。池田の所得倍増政策なくして、いまの日本は存在しない」という——。
「強い政治家だった」という意味不明な美化
戦後最高の総理大臣と言えば、古くは吉田茂と相場が決まっていました。今だと田中角栄でしょうか。
吉田は敗戦後の混乱期に、横暴極まりないGHQの圧力に対し、よく立ち向かいました。
なにより日本を独立に導いた功労者ですから、批判したい点も山のようにありますが、ある程度の高評価は納得できます。
しかし最近は、なぜか吉田以上に田中角栄の評価が高く、角栄の本を出せば売れる「角栄産業」と言われるほどの大人気ぶりです。
生前の角栄は、ロッキード事件など汚職で真っ黒の金権政治家として、およそマトモなオトナが名前を口にするのもはばかられるような汚水の臭いがする政治家でしたが、今となってはその強引な政治手法が「強い政治家だった」と美化されて、意味不明な感慨が人気を呼んでいます。
現実の田中角栄なんて、所詮は高度経済成長の遺産を食いつぶしただけの無能な政治家なのに、「日本の経済が一番立派な時代を作った立派な総理大臣」みたいな間違った歴史認識が蔓延しています。
もちろん、人間の評価に百点も零点もありません。
角栄の凄さはナンバー2だった時です。角栄は池田勇人内閣で大蔵大臣を三度も務めました。だから高度経済成長をけん引した政治家のイメージが出来上がったのですが、実際の角栄は「池田に使われていなければ何をしでかすかわからない人」にすぎなかったのです。
現代の日本人は遺産を食いつぶしているだけ
さて、そんな吉田や角栄に対して、池田勇人の評価です。
池田は、吉田と角栄の間にあって、忘れられている存在と言ってもいいでしょう。
しかし歴史を知ればわかりますが、この池田勇人こそ戦後最高の総理大臣です。
日本を先進国にしたのは池田です。
いくら陰りが見えたと言っても、日本は世界の中では経済大国です。われわれ現代日本人が、いま生きていられるのは、すべて池田勇人のおかげです。