中国、台湾が相次いで加盟を申請した背景は

9月16日、中国商務省は“環太平洋経済連携協定(TPP)”への加盟を、現在の事務国であるニュージーランドに正式に申請した。その背景には、中国が、日米豪印や欧州各国がインド太平洋地域での連携を強化する動きに揺さぶりをかける狙いがある。

オンライン形式で開かれた閣僚級の「TPP委員会」。上段左から2人目は議長を務める西村康稔経済再生担当相=2021年9月1日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
オンライン形式で開かれた閣僚級の「TPP委員会」。上段左から2人目は議長を務める西村康稔経済再生担当相=2021年9月1日、東京都千代田区

一方、中国の加盟申請後の22日、台湾も加盟を正式に申請した。台湾は中国と対立している。両国の加盟申請によってTPP交渉は、中国・台湾の対立が持ち込まれ複雑化している。中国の申請によって、TPP加盟国の中に中国との関係を重視する国が増える可能性がある。それは、国際世論における台湾の発言力維持にマイナスだ。台湾はその展開への危機感を一段と強め、申請を急いだとみられる。

本来、米国のバイデン政権はTPPへの復帰を目指して、自由で公正な貿易、投資、競争に関する多国間連携の強化に取り組むべきだった。しかし、トランプ前政権の離脱以降、米国の対TPP姿勢がはっきりしない。中間選挙を控える中、バイデン政権が多国間の経済連携にエネルギーを振り向けることも難しい。

その状況下、本年のTPP議長国であるわが国は、是々非々の姿勢を明確に示してTPPの根本的な目的とルールを加盟国、米欧各国などと共有し、今後の交渉議論の環境を整えなければならない。

もともとは米国による”対中包囲網“だったが…

もともと、TPPの目的は米国を中心にした中国包囲網の形成にあった。時系列で米国の対中姿勢を確認すると、2013年に米オバマ政権(当時)の国家安全保障担当大統領補佐官だったスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えたと考える安全保障などの専門家は多い。その後、フィリピンやベトナムなどが領有権をめぐって中国と対立し始めた。

中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ。オバマ政権はTPP交渉をより重視し、関税の撤廃、知的財産の保護、国有企業に関する補助金政策などに関して加盟国間でルールを統一し、より効率的、かつ公正な経済面での多国間連携を目指した。政府調達に関する内外企業の差別を原則認めないこともTPPに含められた。

米国にとってTPPは、経済を中心に安全保障面からも対中包囲網を整備し、自国を基軸国家として経済のグローバル化を進め、そのベネフィットを得るための取り組みだったのだ。