ストレス過剰による体調不良に
9月、和栗さんはまぶたのけいれんや動悸など、さまざまな不調を感じていた。父親が施設に入る日の午前3時。マンションの下階の住人の物音で目が覚め、窓を閉めようと起き上がろうとした時、体がぐらっと揺れる。目をつぶっても頭がグルグルし、手の平や体から嫌な汗がにじむ。
いっこうにグルグルがおさまらないため、財布に入れていた安定剤を飲んだ。20代の頃、不安神経症(今で言うパニック障害)と診断され、今も年に2〜3回クリニックで頓服をもらっている薬を、お守り代わりに持っていたのだ。
翌日、無事めまいはおさまり、父親の引っ越し作業を決行。長女とその息子、次女夫婦、和栗さんとその息子、そして和栗さんのパートナーの8人が手伝った。
その後、仕事へ行くと、同僚の元看護師から「帰宅後、副交感神経が優位になると現れるのは、ストレス性のめまいです。もうお父さんいないんですから、のんびりしたほうがいいですよ」と心配される。
念のため、メンタルクリニックへ行き、「父の施設入所のための忙しさでめまいを発症してから、何となく頭の真ん中のぼんやりした感じが取れなくて……」と相談。すると、「まだ何か悩みがありますか?」と医師。
実は和栗さんには、10年近く付き合い、再婚まで考えたパートナーがいた。しかしそのパートナーが浮気していたことがわかり、別れ話をしている最中だったのだ。だが、恥ずかしくて言えなかった。
医師は「お父さんの件は、良いタイミングだったと思いますよ。1人で仕事と介護は難しい。施設に預けることは、悪い選択だとは思いません」と言うと、「私もそう思う反面、施設に追い出したような気持ちになります」と和栗さん。「その葛藤がストレスになってるのかもしれませんね。ちょうど更年期のタイミングでもありますし。フワフワするのは自律神経系のめまいです」。そう医師は言うと、いつもの安定剤を処方してくれた。