更新料を巡っては、09年8月27日には、大阪高等裁判所で「1年契約で更新料2カ月分強」(2年にならすと4カ月分)の特約が無効との判決が出ました。一方、10月29日には、同じ大阪高裁が「2年契約で更新料2カ月分」が有効という判断を示しています。
これらは個別の契約取引に応じて有効性を判断していますから、更新料が一律に無効または有効になるわけではありません。「どれぐらいの更新料ならば消費者契約法10条に反しないか」という具体的な線引きを明らかにしたものだと捉えることができます。
10月判決が更新料を有効とした背景には、消費者契約法の施行以前の判例が影響していることも考えられます。1979年に東京地方裁判所は、「2年ごとで更新料2カ月」という特約について、「借地借家法六条」には違反しないとの判断を示しているからです。
つまり更新料についての具体的な基準はすでに判例上示されているわけです。進行中の裁判は、あやふやだった更新料の法的な位置づけを再定義し、更新料などの賃料以外の負担について、賃貸人と賃借人間の「情報」と「交渉力」の格差の是正が目的だといえます。更新料の性質について、8月判決は「対価性が乏しい」とした一方、10月判決は「賃借権設定の対価」として礼金に準ずるとしました。今後、最高裁で8月判決と10月判決の双方の結論が矛盾なく説明できるような判断が示されるものと期待されます。
他地域に比べ首都圏と京都は賃料以外の特約が多いようです。8月判決は滋賀県野洲市、10月判決は京都市での事例でした。しかし賃貸契約では仲介手数料の定額化や礼金ゼロ物件の台頭など、シンプルな契約が増えています。
現在、賃貸物件は供給過多の状況です。今後、貸し主が賃料以外の「特約」を求めることはますます難しくなるでしょう。消費者契約法10条という消費者にとって強力な法律がある以上、わかりづらい特約は貸し主のリスクでしかありません。判決に一喜一憂せず、双方に誤解がないような透明な契約とすることを薦めます。
※すべて雑誌掲載当時