今年7月までに自殺した小中学生や高校生は272人と、年間で過去最多となった去年の同じ時期を上回るペースで増えている。文教大学教授で小児科医の成田奈緒子さんは「コロナ禍によるライフスタイルの変化が影響している恐れがある。感染予防に気を取られるあまり、子どもの精神衛生をおろそかにしてはいけない。外出する機会をつくったほうがいい」という――。
学校の教室
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中学生の24%、小学校高学年生の15%が鬱状態

新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、世界全体を覆う不安は長期化しています。その中でも子どもを育てる親御さんの不安は格別だと思います。

自分と家族はこの先も安全に過ごせるのか。デルタ株では子どもへの感染も増えています。新学期が始まり、学校で感染することを心配される親御さんも多いでしょう。しかし、小児科医としてはマスク着用や手洗い、換気などの感染予防対策には気を配りながらも、あまり神経質になりすぎず、普段通りの生活を大切にしてほしいと願っています。

それというのも、今年7月までの子どもの自殺が、年間で過去最多となった去年の同じ時期を上回るペースで増えているからです。厚生労働省の月次報告(暫定値)によると、今年7月までに自殺した子どもは272人(小学生7人、中学生75人、高校生190人)で、去年の同じ時期の241人を上回っています。

発達途上の子どもには、「からだとこころのバランスが常に保たれていること」がとても大事です。昨年から続くコロナ禍で、子どもたちはこのバランスがゆがんだ生活を長く強いられています。大人には思いもよらないささいなことがきっかけで、衝動的な行動を起こす可能性があり、非常に注意が必要な状態と言えるのです。

定期的に「コロナ×子どもアンケート」を実施している国立成育医療センターの今年2月の報告によると、中学生の24%、小学4~6年生の15%に中等度のうつ傾向が見られています

自律神経の乱れが心の健康を脅かす

この報告の中で、ここ一週間のうちに「寝つきが悪い、途中で目が覚める。あるいは寝すぎる」と答えた中学生は49%、小学生は40%、「あまり食欲がない、体重が減る、あるいは食べ過ぎる」と答えた中学生は29%、小学生は28%に上っています。これらはからだとこころのバランスが崩れて、うつになりかかっているサイン。ほかにも、「すぐに疲れたという」「腹痛や下痢、便秘が多い」「肩こりや腰痛を訴える」「笑顔や発言が少ない」「反応が鈍い」「すぐに怒る」「イライラしている」など、子どもたちに変わった様子がないか、サインを見逃さないように気をつけてほしいと思います。

からだとこころのバランスの崩れというのは、内臓の働きや心の安定を司る自律神経の乱れによって引き起こされます。子どもの心身を健康に育むには、自律神経が整う暮らしを心がけることがとても大切なのですが、コロナ禍によるライフスタイルの変化が悪影響を与えています。

こうした悪影響を最小限にとどめるにはどうすればいいのでしょうか。今回は、小児科学・脳科学・そして心理学の観点で不安にさいなまれる親子を長く診てきた立場から、親がやってしまいがちな5つのNG行動についてお伝えします。