いずれは恒久的な「情報局」を内閣に置いた方がいい

――政策の決定者である首脳は政治のプロであっても、必ずしも特定の政策立案に正確にマッチする情報関心の発出点になれるわけではありませんね。

もちろん首脳や官邸が「何を知りたいか」を提示することはありますし、そうした事例は官邸主導の流れもあり、むしろ増加しつつあります。一方で、政策立案に沿った情報関心を専門的視点から与えるということも必要だと思います。

北村滋『情報と国家 憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点』(中央公論新社)
北村滋『情報と国家 憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点』(中央公論新社)

――政治的課題が専門化、複雑化するなかでは、そうでしょう。

一方で、やや逆説的ではありますが、すべての情報機関が、国家安全保障局がどういう政策を指向するかを常に考え、それに合致する情報を収集するということも必要だと思います。その意味で、インテリジェンス・コミュニティが出席する司司の政策調整会議の場も重要だと思います。

――国家安全保障局が政策立案の上で必要な情報のテーマを情報機関に発出する起点として重要であることは分かりました。だからこそ、我が国の情報収集機能の向上もまた必須の課題のような気がします。

いずれは、情報局といった恒久的な組織を内閣に置いた方がいいと思います。現在の内閣情報官は実質的に内閣情報調査室の長であるにもかかわらず、法令上は官房長官や副長官といった官邸要路を補佐するスタッフとされ、まるで個人商店のようです。情報機構としての恒常性を持つ組織にすることが大事だと思います。残念ながら、在任中には実現できなかったですが、それがこれからの課題だと思います。

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