顧客区分を考える

一般に、マーケティングには「セグメンテーション(市場細分化)」という顧客区分の考え方があります。用いられる変数は、おもに図表1の通り。

市場を区切る「軸」の一例
市場を区切る「軸」の一例

たとえば、アルコール度数0.5%のビールテイスト飲料を開発しようというとき。そうした微アル飲料を好む人は、国内ならどの辺りに多く住んでいて(地理)、どのぐらいの年代や年収の人に、どれぐらいの割合で見られる傾向なのか(人口動態)。

この2つは、一人の人間であれば、ある程度カテゴライズが“固定”しています。

多様な飲み方の提案がビジネス成功の決め手

ところが残る2つ、すなわち「心理」や「行動」の変数は違う。同じ一人の人でも、カテゴライズは「オケージョン(シーン)」によって異なり、とくに日本人はその傾向が強い、ともされています。

たとえばアルコールに強い女性が、ふだん夜の飲み会では度数5.0%のビールを好む一方で、日中の「ママ友会」では「飲んだ雰囲気だけ味わいたいから」とノンアルのカクテルを飲み、家事の合間に「ちょっと気合いを入れたいから」と微アル飲料を飲み、夜寝る前には「頑張った自分へのご褒美」として、度数15%のワインを飲む……といった具合。

近年、人口減少が著しく、若い世代で「飲まない(飲めない)」人が増える日本では、いかに多くのツール、すなわち微アルを含めたさまざまな商品を用意し、その飲料にふさわしい多様なオケージョンや飲み方提案ができるかが、ビジネス成功の鍵を握るのです。

他メーカーも微アル市場に注目

アサヒビール以外のアルコールメーカーも、微アル市場に注目しています。

たとえば、9月中旬に「微アルコールビールテイスト」の「ザ・ドラフティ(The DRAFTY)」(アルコール度数0.7%)を発売予定のサッポロビールや、「ノンアル、ローアル商品」の販売量を、18年比で115%とする目標を掲げるキリングループなど。

近年は、先のアルハラや健康リスクなど、アルコールを巡るネガティブな側面が多く報道される傾向にありますが、「アルコールは“適量”や“多様性”に配慮して楽しめば、コミュニケーションを深める貴重なツールになる」と梶浦さん。

スマートドリンキングという新たな概念の旗振り役になることで、アルコールのポジティブな側面を世の中に伝えていきたい……、そんな同社の思いが今後、令和の新たな「イケてる上司像」にも、いい意味で影響を与えそうです。

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