日本人の平均賃金は先進国で最低クラスだ。なぜそれほど低賃金の国になってしまったのか。嘉悦大学の高橋洋一教授は「90年代以降、失われた時代における日本銀行の無策がこの状況を招いた」という――。

※本稿は高橋洋一『給料低いのぜーんぶ「日銀」のせい』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

日本銀行(2018年12月11日)
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雇用の改善を果たしたアベノミクス

厚生労働省は2021(令和3)年5月、2020(令和2)年度平均の雇用情報を発表した。それによると、有効求人倍率は1.10(前年比0.45ポイント減)、完全失業率は2.9%(同0.6ポイント増)だった。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響をモロに受け、非正規の就業者数が直近より減った形ではあるが、民主党政権の末期(2012年)の有効求人倍率0.8、完全失業率が4.3%と比較すれば、日銀がマクロ経済政策で緩和策を続けた結果、大幅な雇用改善が図られてきたことはあきらかである。筆者が常々言っていることだが、金融政策とは雇用政策である。失業率を下げるということは、経済成長とほぼ同じことなのである。

極論をいえば、政権ができるマクロ経済対策は雇用の確保しかない。それさえできれば及第点なのだ。

アメリカのFRB(米国準備制度理事会)では、インフレ率と失業率は二重の責務ともいわれている。一方で、日銀は「雇用は日銀の仕事でない」と歴史的に整理されてきた。しかし、これは世界の経済学の常識とはかけ離れている。

その意味で、日銀の総裁が白川氏から黒田氏へ変わり、大胆な金融緩和策がとられ、その結果、失業率の低下と有効求人倍率が上昇したことは日本経済にとって望ましいことであり、筆者も想定していたことである。