5.0%の“ドライ市場”を築いたアサヒが0.5%の微アルに注目

もっともアサヒビールといえば、1987年、アルコール度数4.5%のビールが主流だった時代に、あえて度数が0.5%高い「アサヒスーパードライ」(度数5.0%)を投入し、たちまちドライ戦争の火付け役となった企業です。

なぜいま、度数わずか0.5%の「微アル」市場に注目したのでしょうか。

梶浦さんいわく「ビアリーの構想は、3年半ほど前からあった。社会的トレンドと技術主導の両輪で開発が進み、約100回もの試験製造を繰り返しました」とのこと。

まず、社会的トレンドについて。ここ数年、国内のアルコール市場では「ストロング系」と呼ばれる高アルコール度数の缶チューハイが人気を集めているのは、皆さんもご存じでしょう。

半面、世界的にお酒を「飲めない人」や「あえて飲まない人」が顕在化し、欧米のミレニアル世代などの間で「Sober Curious(ソーバーキュリアス。あえて飲まないこと)」と呼ばれる食スタイルがブームに。

日本でも、20代の約4分の1が「ソーバーキュリアス」と見られています(20年 ニッセイ基礎研究所)。そんななか、アルコール度数0.6~0.9%程度の「ローアル」や、いわゆる「ノンアル」市場が近年、右肩上がりで成長を続けているのです(21年 富士経済)。

コミュニケーションツールとしてのアルコール飲料

ちなみにノンアルの定義は、日本では「アルコール度数1%未満」とされますが、飲酒運転の厳罰化や妊婦への配慮などもあり近年、ノンアルコールビールの主流は「度数0.00%程度」に。

こうしたなかで登場した「微アル」市場の「ビアリー」(アルコール度数0.5%)のターゲット層は、アルコールでいう「出口」と「入口」の両者がメイン、だと梶浦さん。

「『出口』は、おもにアルコールの健康への影響が気になる40、50代やそれより上の人たち。他方の『入口』は、アルコール経験がさほど多くない20、30代の若者です」

アサヒビールは、アルコールを「人と人との有効なコミュニケーションツール」だと位置づけています。

オンライン飲み会
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※写真はイメージです

すなわち、酒(含・微アル)に強い人も弱い人も、互いが相手の「飲み方の多様性(スマートドリンキング)」を尊重し合えれば、アルコールを介することで会話が弾んだり、他者への理解がいっそう深まったりする。そうしたコミュニケーションの促進からも、アルコールはより豊かな社会の実現に貢献し得る……。

21年9月4日、同社がマッチングアプリ大手の「Pairs(ペアーズ)」とコラボし、「お酒と恋愛の新常識」を探るオンラインマッチングイベントを開催したのも、「アルコールに強い人も弱い人も、ビアリーをコミュニケーションツールとして活用してもらうことで、互いに理解や会話を深めるきっかけとなれば」との思いがあったと、梶浦さん。