※本稿は、久里建人『その病気、市販薬で治せます』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
体に合った薬を選ぶ
体重を減らす目的で市販薬を購入する方も多くいらっしゃいます。飲むだけで痩せるような夢の薬はもちろんありませんが、「運動や食事と合わせて、何か少しでもダイエットの足しになるようなものが欲しい」と願うお客さんは多いようです。
ところが、薬剤師たちから睨まれている薬が、まさにこのダイエット目的で使われる市販薬たちです。その理由については後ほど詳しく述べるとして、まずは体重減らしの薬の選び方から説明します(以下、肥満症の改善に効果があるとされる薬を「体重減らしの薬」と呼びます)。
体重減らしの薬を選ぶときには2つのポイントがあります。
1つ目は、「体に合った薬を選ぶこと」です。体重減らしの市販薬はみな漢方薬です。漢方では肥満症をいくつかのタイプに分けて、それぞれ異なる対処法を取るのが正しい使い方とされており、例えば防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)という薬は、食べ過ぎなどによる脂肪太りで、お腹がヘソを中心に盛り上がったハリのある“太鼓腹”の人などに向く薬です。それに対して、水太りと呼ばれるようなぽっちゃりとした体型で、お腹はボテ~ンとしている“カエル腹”の人などに向くのは防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。
大ヒット商品「ナイシトール」
体重減らしの漢方薬の中で、おそらく最も売れているのは「ナイシトール」です。「ナイシトール」は、2006年に中高年男性をターゲットとして小林製薬から発売されて以来大ヒット商品となり、今や肥満の市販薬の代名詞と言えるほどの地位を築きました。ただし、「ナイシトール」シリーズの商品は全て防風通聖散なので、ダイエットしたいからといって知名度だけで飛びつくと、体に合わない漢方薬を使ってしまうことになります。
体質ごとに薬を選びやすいのは、クラシエの「コッコアポ」シリーズです。同シリーズでは、肥満のタイプ別に3つの漢方薬を用意しています。漢方薬は専門家に相談しながら選ぶのが基本ではありますが、色々な種類があることを知るには格好のシリーズだといえるでしょう。