同じ成分でも「量」が違う

薬選びの2つ目のポイントは、「成分の量」です。例えば市販の防風通聖散は、「ナイシトール」も含めて複数のメーカーから発売されています。お客さんから「何が違うの?」と聞かれることがありますが、一番の違いはエキスの量です。

例えば「ナイシトール」シリーズには「85a」「Ga」「Za」の3種類の商品がありますが、1日分あたりのエキスの量が「85a」で2500mg、「Ga」で3100mg、「Za」で5000mgと異なります(これらはパッケージをよく見ると記載されています)。エキスの量だけではなく、その原材料となる生薬の量も「85a」<「Ga」<「Za」の順に多いことがわかります。

市販薬で最も防風通聖散のエキス量が多い商品は何かと言うと、私が知る限りでは1日分あたり6000mgの商品(クラシエの「防風通聖散エキスZ錠クラシエ」など)です。ところが、外箱にも「6000mg」と大きく書かれているものの、成分表にある「生薬の量」をよく見ると、エキス量が5000mgと少ないはずの「ナイシトールZa」は総量28gで、クラシエは総量27.1gであることがわかります。

なぜこのようなことが起きるのかというと、防風通聖散の規格は実は6種類あり、さらに生薬からエキスを作る製法はメーカーによって異なるため、ほとんど同じ種類の生薬を使っていても、出来上がったエキスの量に差が出るのです。

これは医療用でも同じことで、その微妙な差からか、同じ漢方薬でも「××メーカーよりも、○○メーカーの方が効く」という評を時々聞きます。エキス量が多い方が効果が高いかどうかについては、非常に難しい問題です。そうであるという研究もあれば、そうではないという研究もあります。

体重計にのる女性の足元
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防風通聖散は「ダイエット薬」なのか

さて、以上が体重減らしの薬の選び方のポイントですが、これを読んでドラッグストアへ走る前に、知っておくべきことがあります。それは、副作用の問題です。防風通聖散を「ダイエット薬」と表現することには、多くの薬剤師が躊躇します。なぜなら薬剤師は、防風通聖散による副作用が数多く報告されていることを知っているからです。

実は、市販の漢方薬の中で副作用の報告件数が一番多いのが、このダイエット目的の漢方薬なのです。2016年の調査報告によると、2005年度から10年間で厚労省が公表した副作用報告367件のうち、最も多かったのは防風通聖散の110件で、同じくダイエット目的で使われることがある大柴胡湯(だいさいことう)も4番目に多い14件でした。防風通聖散の副作用報告のうち、6割が肝機能異常、2割が肺障害でした。