大物事務次官の呼び声高い勝栄二郎財務事務次官に操られる「直勝内閣」――そんな印象が定着してしまった野田佳彦内閣。命名者は「たちあがれ日本」の片山虎之助元総務相だ。国会で首相の増税路線を「財務省が全部主導している」と指摘、「直勝内閣なら短命ですよ」と皮肉ると、首相は「特定の省の特定の誰かに洗脳されたわけではない。キッパリ申し上げたい」とムキになって反論した。

だが、首相の「直勝」ぶりは否定できないところ。

「民主党内では、先の党代表選の第1回目の投票で野田氏が第2位につけることができたのは、勝氏ら財務官僚が“野田氏に入れてほしい。反消費税の小沢系の海江田万里はまずい”と民主党議員に働きかけたからと言われている。また野田氏は組閣に先立ち、勝氏に“いい人はいないか”と大臣候補について相談したぐらい勝氏に頼っている。野田氏に勝氏を紹介したのは旧大蔵省出身の藤井裕久元財務相。そして官邸で首相を支えるのは財務省出身の太田充主計局次長。首相秘書官としては破格の大物で、ほかの省庁から派遣された秘書官たちは太田氏に対して何も言えない」(官邸関係者)

しかも官僚トップの官房副長官(事務)には、東大時代の先輩で、勝氏と同じサークルだった盟友の竹歳誠・前国土交通省事務次官が就いている。

他省庁からもブーイングが。

「菅直人政権を支えてきた総務省の元高級官僚は、最近“野田政権の財務省偏重はまずい。財務省に頼らずとも総務省、厚生労働省の官僚だって税と税制を理解している”と野田政権の直勝ぶりを批判していた。過去の事務担当の官房副長官人事は、主に総務省と厚生労働省の事務次官経験者がたすきがけで担当してきた。それだけに総務、厚生労働両省は財務省主導の野田官邸の布陣に強い不満を持っている」(総務省関係者)

また財務省は、民主党の公約である「国家戦略会議」の設置についても「国家戦略会議に小泉政権時代の経済財政諮問会議のような決定権を与えると、財務省主導の邪魔になる、として会議の骨抜きを企んでいる」(官邸関係者)という。

国民に増税を強いる前に、首相は徹底した公務員制度改革を断行すべきだ。