政治主導のシンボルとして野田佳彦首相がこだわった「国家戦略会議」構想が、ようやく日の目をみる。
国家戦略会議の新設は、野田首相が国会での所信表明演説で言及、藤村修官房長官も「首相の下に設置された国家戦略会議が外交・安全保障を含めた国家戦略をハイレベルで検討、推進していく」と説明。10月21日の閣議で設置が決まった。
「所管の古川元久国家戦略・経済財政担当相は、郵政改革を断行した自民党の小泉純一郎政権当時の経済財政諮問会議のような強い権限を有する会議にしたいと張り切っていた。経済財政諮問会議は内閣府設置法に基づいて設置され、小泉政権の経済政策立案の中核を担った。経済財政諮問会議には日本経団連の奥田碩会長(当時)ら実力者が結集、同会議が作成した“骨太の方針”に基づいて小泉改革は進められた」(政治部デスク)
ところが新設される同会議は法的裏づけを持たず、経済財政諮問会議のような強い権限を持たない。要するに“骨抜き”にされたのだ。民主党中堅議員が言う。
「各界の意見を“聞きおく”形ばかりの諮問会議になりそう。法的裏付けのある経済財政諮問会議を活用すれば済んだ話だが、自民党政権の“お古”を使うことはプライドが許さない。かといって衆参ねじれ国会の下、会議に法的裏付けを持たせる新たな法律をつくることも不可能。それで換骨奪胎でスタートせざるをえなくなった」
同会議が取り扱うテーマも縮小を重ね、当初検討された安保は対象外、外交についても経済外交のみに限定される。藤村官房長官も「(1)エネルギー政策(2)経済成長と財政健全化の両立(3)海洋・宇宙開発など、の三本柱になる」としている。
「同会議に強い権限と広いテーマを与えると、中央省庁の縄張りが侵される。そこで、財務省を中心に会議の骨抜きが図られたという。担当の古川大臣が総理執務室に入るのを財務省が妨害し“なかなか総理に会えない”と大臣がぼやいたという話もある」(官邸スタッフ)
同会議のメンバーも当初の古川構想では「民主党の政調会長も入ってもらう」ことになっていたが、藤村氏は「党側の人間は入れない」と突っぱねた。「ポスト野田の最右翼の前原誠司政調会長にこれ以上、目立たれるのは困る」(前出中堅議員)からだという……。