10月6日、東京地裁(大善文男裁判長)で民主党の小沢一郎元代表を被告とする政治資金規正法違反(虚偽記載)事件の裁判が始まった。
小沢被告の政治資金管理団体「陸山会」を舞台とする虚偽記載事件では、すでに9月26日に東京地裁(登石郁郎裁判長)が、小沢被告の元秘書、石川知裕衆院議員ら3人に禁錮1年から3年の執行猶予付きの有罪判決を言い渡しており、石川被告らと共謀したとして強制起訴された小沢被告に対し、裁判所がどのような判断を下すかに関心が集まっている。
元秘書に対し、登石裁判長は「小沢事務所は談合を前提とする公共工事の本命業者の選定に当たって強い影響力を有し、受注を希望する企業に多額の献金をさせていた」として、石川被告らが水谷建設から1億円の裏金を受け取っていたことを認定。石川被告らは、裏金の存在を隠蔽するという動機に基づき、小沢氏から借りた4億円などを陸山会の政治資金収支報告書に虚偽記載したと認定した。
「一審とはいえ“裏金授受”のレッテルを貼られたのは大きな痛手。2011年9月までに政治的に復権し、民主党の代表選挙に出馬するというシナリオを小沢氏は描いていたが、もはや完全なフィクション。元秘書は判決を不服として控訴したが控訴審判決が出るには2年ほどかかる。小沢氏が自分の裁判で無罪になっても、検察官役の指定弁護士が控訴したら小沢氏は被告の身分のままだから、もはや小沢復権はありえない」(民主党幹部)
一審有罪判決を受け、民主党内で「早ければ11年暮れにも小沢系グループが民主党を離党、新党を結成する」(民主党中間グループ)と囁かれ始めた。刑事被告人のまま党内に留まっても、小沢氏が今のジリ貧状態を打開することは難しい。しかし新党をつくっても、小沢氏自身が有罪になったら、その時点で政治生命は完全に終わる。裁判の最大のポイントは元秘書との共謀が成立するかどうかだ。
「共謀を示す証拠は、検事に共謀を認めた捜査段階での石川被告の供述調書や、融資契約書の小沢氏の署名など極めて限られている。ところが石川被告らの裁判で、登石裁判長は石川調書を“検事による威迫と誘導によるもの”として証拠採用しなかった。小沢裁判で大善裁判長がこれを証拠採用するかどうかで裁判の行方が大きく左右される」(司法担当記者)
判決は12年4月の予定だ。