⑤何があっても「しかたがない」

負けた時は自分のせいだと思っている選手が多くて、僕自身もそう思ってしまいます。だからこそ、一人にならず、誰かと話せる環境を作る。コミュニケーションを取る機会があれば、それだけでメンタル的にプラスに持っていけるのです。

福澤達哉選手(元パナソニックパンサーズのバレーボール選手)をはじめとする先輩たちとごはんに行った時に相談することもあっても、「苦しいんです」と吐露するのは気恥ずかしいので、自分で消化することが多い。逆に他の人の話を聞くことで、自分の考えを整理できたり、消化できたりすることがあります。なぜか、人の話が自分のつらさを紛らわしてくれることもあるのです。

基本的には、つらいことがあっても「しかたがない」の6文字で終わってしまいます。

怪我をした時もそうでした。ポーランドで足首を骨折、だったら日本に帰ろうと、すぐに切り替えられました。怪我をした直後に日本代表のドクターにかけ合って、データを診てもらう手はずを整えて、MRIをとったらすぐにデータを送りました。ドクターの診断は全治2カ月。2カ月後にはシーズンが終わってしまうので、帰国して治療できるようクラブを説得、日本に帰る手はずを整えました。

左足にギプスをはめ、ソファで休む男性
写真=iStock.com/Memorystockphoto
※写真はイメージです

怪我をしてからここまでで1週間弱。苦しさに身を任せて沈み込むのではなく、「怪我はしかたがないから次」とすぐに心を切り替えることができたからこそ、スピード感を持って決断や交渉ができたのだと思います。

⑥ミスは必ず起こるもの

僕は「ミスは起こるもの」と認識しています。決してミスをすることを肯定しているわけではなく、ミスを受け入れて、次に進むという意味を込めているのです。「ミスは起こるもの」と思っていないと気持ちが持ちません。

ミスを受け入れられる人は、メンタルが強い。逆に試合中にミスを引きずっている人は、それが表情に出て、次のプレーに思いきりがなくなってしまいます。ミスに引きずられてしまう人は、「ミスが起きた時の心の準備ができていない」ということです。

柳田将洋『努力の習慣化』(KADOKAWA)
柳田将洋『努力の習慣化』(KADOKAWA)

成功した数字、言い換えればミスをしなかった数字は常に計算されていて、バレーボールにとって欠かせない要素ではあるのですが、コートに立つ選手は試合中に数字を気にするべきではないのです。

あくまで試合後に気にするものであって、プレー中に数字のことが頭をよぎってフォームが崩れたり、ミスが出たり、プレースタイルが変わってしまったり、と影響を受けていては実力を発揮できません。数字を気にしすぎて、数字を悪くしては、本末転倒です。

ベストなプレーをするためには、「ミスをしたかどうかは気にしないで、いつも通りプレーするだけ」というところに気持ちを持っていければいいのです。ダメならダメで次に集中できるよう、冷静に考える。引きずらないようにする。そうすれば、どんな状況にも対応できるようになります。

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