ギャラが高額な芸能人ほど個人事務所を設立するメリットがある

芸能人の個人事務所の形態は、①特定の芸能事務所や企業に所属せず、完全に独立した自分自身をマネージメントする個人事務所、②徳井氏のように他の事務所に籍を置いた状態で設立する個人事務所──という2パターンに大別できる。

事務所に所属しながら個人事務所を設立する場合、その目的は節税以外の何物でもない。

所属事務所から受け取る高額のギャラに課せられる税額は、個人事業主として受け取る場合の所得税より、自身の資産管理を目的に設立した法人(個人事務所)として受け取る場合の法人税の方が、格段に少なく済むからだ。

例えば年収4000万円を超える芸能人の場合、個人事業主なら収入から経費を差し引いた所得額の55%(住民税含む)を納税しなければならない。だが資本金1億円以下の法人を設立し、そこを経由してギャラを受け取る形にすれば、所得にかかる実効税率は33.58%(18年度)に抑えられ、所属事務所に源泉徴収されることもない。

ギャラが高額な芸能人ほど個人事務所を設立して、そこでギャラを受け取る方が節税できるのだ。

しかも個人より法人の方が、経費として認められる支出も多い。自分自身を代表者にした法人であれば、自身に対する役員報酬は経費として扱われ、家族を社員にして給料を支払うこともできる。

要するに徳井氏が09年に個人事務所「チューリップ」(3月決算、社員は代表者の同氏1人)を設立したのは、こうした税制上の比較優位性を利用して節税するのが狙いだった。

ギャラが3000万円を超えれば個人事務所のほうがお得

芸能プロダクション関係者が話す。

「個人事務所を設立して、高級外車の購入費用を事務所の必要経費として計上したり、豪邸を自宅兼事務所にしたりする芸能人は数多い。所属事務所の方はギャラの支払先が変わるだけなので、敢えて思い止まるよう説得する理由もありません」

芸能界の事情に詳しい税理士もこう語る。

「収入から経費を差し引いた所得が1800万円を超えると、所得税と住民税を合計した税率が50%に達します。確定申告などの税務を芸能人から依頼されている税理士は、ギャラが3000万円を超えたあたりから個人事務所の設立を進言することが多く、芸能人もそれに従うのが普通。

06年の『M─1グランプリ』優勝を契機に収入が急増した徳井氏も、先輩芸人らの勧めで個人事務所を設立したのでしょう」