作為的ではない無申告はバレ元スキームに該当しない

この疑念に対して、前出の国税OB税理士が真相を語る。

田中周紀『実録 脱税の手口』(文春新書)
田中周紀『実録 脱税の手口』(文春新書)

「確かに芸能事務所のギャラを個人事務所で受け取る場合、芸能事務所は源泉徴収しないばかりか、法定調書の報告義務もないので、税務署は把握が難しい。

また、芸能人本人以外の妻や家族などを法人の代表者にしておけば、芸名と本名が異なるため目立つこともなく、5年間頬かむりして税金を支払わずに済む。バレ元スキームとは、こうした税法の専門知識を駆使して、単純無申告を装うものです」

このOB税理士の解説はさらに続く。

「ところが徳井氏の場合、チューリップの代表者は本人で、税務署は過去の期限後申告を受けて同社を監視できる状況にありました。それに税理士が関与して申告を促している。

これではバレ元スキームとは言い切れません。マルサが同氏の強制調査を見送ったことは、国税当局が『徳井氏の無申告は一罰百戒を期待できるほど悪質なものではない』と判断した証しだと思います」

20年2月に芸能活動再開を宣言した徳井氏は同年10月、出演を約1年間見合わせていた日本テレビの地上波バラエティ番組に復帰した。いずれにせよ同氏の無申告“騒動”は、無節操な節税に走ろうとする芸能人の意識に一石を投じたに違いない。

源泉徴収制度の下で否応なく徴税される一般市民にとって、高額所得者である著名人の税逃れは見逃すことのできない行為だ。その事実が伝えられると世論から激しいバッシングが浴びせられ、彼らはせっかく手に入れた特権的地位を瞬時にして失う。

メディアから偶像として祭り上げられる著名人であればあるほど、納税に対する十分な配慮が必要だろう。

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