ワクチン接種で死亡者数レベルが過去最低レベルで推移している

新型コロナ関連のデータの基本は、新規感染者数と感染死亡者数(陽性者のうち死亡するに至った者の数)である。

【図表1】ワクチン接種で「死亡者数は低減、感染者数はむしろ増加」という世界の動き

日本の両データの推移を見てみると(図表1参照)、明らかに5波に及ぶ感染拡大が認められる。第5波の特徴は何といっても感染者数の多さである。第3波と第4波のピークでは一日当たりの新規感染者数が6000人のレベルであったのに対して、第5波ではすでに1万人を大きく超えており、また、ピークが見通せない状況である。

第5波のもうひとつの大きな特徴は、これまでの波と異なって死亡者数の拡大が伴っていない点である。死亡者数の拡大は感染者数の拡大からかなり遅れるのが通例であるので、これから上昇に転じるという恐れがないとはいえないが、波形から判断すると決定的な差が生じていると見ざるを得ない。以下でふれる欧米の推移を考え合わせても、死亡者数の低減はまず間違いがないだろう。

これは、人口比のワクチン完全接種率(部分接種ではなく必要回数打ち終わった割合)のカーブからも、ワクチン接種が進んでいる影響であることは確かであろう。わが国では高齢者を優先して接種を進め、重症化や死亡につながりやすい高齢者に限っては2回の完全接種率は約8割に達している。これが死亡者数の低下をもたらしているのである。

テレビや新聞では感染者数のグラフはやたらと登場するのに死亡者数のグラフはほとんど見られない。しかし、著名人や身近な人の死亡事例が目につかなくなっていることから国民はこの点を実感し始めており、それが気のゆるみにつながっている点は否定できないのである。

一方、死亡者数の低減は政府や自治体も理解はしており、国民の行動抑制につながる強硬なコロナ対策が打ち出されない背景となっていると考えられる。