日本の女性の幸福度は上昇している
この問に対して、ズバリ答えたのが国際医療福祉大学の光山奈保子准教授と国際協力機構 緒方貞子平和開発研究所の清水谷諭上席研究員の研究です(※2)。
彼女たちの研究は、2000年から2010年までの間で、日本の男女の幸福度がどのように変化したのかを分析しています。その結果、次の2点が明らかになりました。
1つ目は、「女性の幸福度が緩やかに上昇している」という点です。女性の幸福度の推移を見ると、2000年代前半では大きな変化は見られませんでしたが、2000年代後半になると、上昇傾向にあることがわかりました。
2つ目は、「男性の幸福度が女性よりも低くなっている」という点です。男性の幸福度の推移を見ると、2000年代前半にやや落ち込み、その後持ち直していったことがわかりました。この結果、女性と比較して、男性の幸福度が相対的に低くなっています。
以上の結果をまとめると、2000年から2010年までの間で、日本の女性の幸福度は上昇したと言えるでしょう。日本では「幸福度のパラドックス」が観察されないというわけです。
この動きは、欧米諸国のトレンドとは逆行していますが、女性が幸せになっているため、むしろ望ましい動きだと言えるでしょう。
さて、ここで次に気になるのは、「なぜ日本の女性の幸福度が上昇してきたのか」という点です。
[2] Mitsuyama, N. & S, Shimizutani (2019) "Male and Female Happiness in Japan during the 2000s: Trends During Era of Promotion of Active Participation by Women in Society," The Japanese Economic Review, Springer, vol. 70(2), pp. 189-209, June.
仕事以外の要因が女性の幸福度向上のカギ
実は光山奈保子准教授と清水谷諭上席研究員の研究では、女性の幸福度が上昇した原因までは分析されていません。
ただ、さまざまな個人属性別の分析を行い、「どのような女性の幸福度が特に上昇したのか」という点は明らかにされています。
この結果を見ると、若年層の女性(特に20~34歳)、子どものいない女性、短大を卒業した女性ほど、幸福度が上昇する傾向にありました。これに対して、結婚しているかどうかや働いているかどうかは、女性の幸福度に明確なプラスの影響をもたらしていませんでした。