環境の改善とともに幸福度が下がる「幸福度のパラドックス」
欧米諸国の女性を取り巻く環境の変化を考えると、「女性の幸福度が低下する」という状況はやや驚きを隠せません。
なぜならば、客観的に女性を取り巻く環境を見ると、時代とともに改善してきているためです。
男女間の学歴、賃金、労働参加率、家庭内の家事・育児時間の格差は、縮小傾向にあります。特に、多くの欧米諸国において、大学に準ずる高等教育を受ける比率は、女性の方が男性よりも高くなっています。
これらの指標は、いずれも家庭内外における女性の地位が向上してきていることを意味します。
それなのに、女性の幸福度は低下する。
このような女性を取り巻く環境と幸福度が逆行する状況は、「幸福度のパラドックス」と言われています。
スティーブンソン教授とウォルファース教授は「幸福のパラドックス」が生じる理由として、①データでは計測できていない重要な社会経済的要因の変化や、②女性を取り巻く環境の変化に伴って、女性の幸福度に影響を及ぼす構成要素に変化が生じた、という可能性を指摘しています。
欧米諸国と比較して、複雑な日本の状況
日本の状況を見ると、欧米諸国と比較して、やや複雑です。
日本でも男女間の学歴、賃金、労働参加率、家庭内の家事・育児時間の格差は縮小傾向にあります。時代とともに女性を取り巻く環境は改善してきていると言えるでしょう。
しかし、日本における家庭内外の男女間格差は、欧米諸国と比較して依然として大きい状況にあります。また、「男性=仕事、女性=家事・育児」といった性別役割分業意識が色濃く残っており、目には見えない男女間格差が存在しています。これが大きな障害となっており、女性の社会進出が進んでも、女性に家事・育児負担が偏る構造が残っています。
これらの状況を考えた場合、「日本の女性の幸福度が時代とともにどのように変化してきたのか」という問いは、非常に興味深いものになると言えるでしょう。
はたして実態はどうなっているのでしょうか。「幸福度のパラドックス」は日本でも観察されるのでしょうか。