トヨタ自動車の強みは「トヨタ生産方式」にあるといわれる。その特徴とはなにか。文筆家の松浦弥太郎さんは「『トヨタ物語』(日経BP)に、『靴ひもを結べるかい。じゃあ、今度はそれを口で説明してくれるかい』という言葉が出てくる。ここにトヨタ生産方式の強さがあると思った」という。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが聞いた――。

※本稿は、野地秩嘉さんのnote「松浦弥太郎氏がトヨタの強さから得たもの(前編)|『トヨタ物語』続編連載にあたって 第13回」の一部を再編集したものです。完全版はこちら

アルゼンチン・ブエノスアイレス州サラテ市のトヨタ自動車工場で働く作業員ら=2021年3月15日
写真=EPA/時事通信フォト
アルゼンチン・ブエノスアイレス州サラテ市のトヨタ自動車工場で働く作業員ら=2021年3月15日

「友達3人にも送りました」

——このたびはドキュメンタリー映画の初監督作品『場所はいつも旅先だった』の劇場公開が決定したそうで、おめでとうございます。

【松浦】ありがとうございます。世界5カ国・6都市を旅しながら撮影してきました。2021年10月29日から公開予定です。

——作品にはきっと車が出てくるのでしょう。松浦さん、ポルシェが好きだから。

【松浦】ポルシェではありませんが、マルセイユのタクシードライバーが出演しています。

——各国の車の話も面白そうですが、今日はトヨタのお話を。

【松浦】野地さんと知り合ったのは数年前になりますか。親しい知人の紹介で、まあ3人でいろいろな話をする機会があって、それから半年に1度くらいの感じでごはん食べに行ったりとか……。

『トヨタ物語』を執筆されていたのも聞いていました。で、本をすぐに読んで、ある感銘を受けたこともあり、友達3人に本を買って送ったんです。

トヨタはどうやってスケールアップしたのだろう

——ありがとうございます。どういう感銘でしたか?

【松浦】僕はアナログな『暮しの手帖』から、ITのクックパッドに入って、暮らしや仕事の楽しさや豊かさ、学びについて発信する「くらしのきほん」というウェブメディアを立ち上げ、続いてヘルスケアをテーマにした「おいしい健康」というスタートアップ事業を手がけ、次は映画監督。常に何か新しいことを求めている。

今までにない新しいことにチャレンジして一生懸命やっているわけですが、そういった生活のなかで、この本を読んで非常に感動したんです。

トヨタという日本を代表する企業がどういったスタートアップで、どのようにスケールアップしていったかというのは、これまで身近でありながらも詳しく知る機会がなかった。

だから、企業というものは成長していくものなんだな、それもある種のリーダーシップや意思決定によって、前に一歩一歩進んでいくのだなということをあらためて知りました。