ユーチューブ動画の尺が短い理由

たとえば、皿洗いをしながらテレビを観ていたとしても、画面から「それは!」という振りワードが流れてきた瞬間に、手を止めてテレビに注目します。

スマホをいじっていても、「それが!」というナレーションが流れてくると、手を止めてテレビ画面を観ます。

そしてテレビから、ディレクターが最も伝えたい重要な「受け」のコメントが流れてくると、「なるほどね」と納得し、また皿洗いやスマホに戻るわけです。

実は、テレビ番組は、「振り」を使って「ここ大事だよ!」とサインを出して画面に惹きつけ、「受け」た後で休憩させ、また「振り」で惹きつける……。

このパターンを繰り返しているのです。

適度に休憩させながら、大事なところはしっかり惹きつける。これによって視聴者は自分の頭を使わなくても番組の内容を把握することができます。

ここで、先ほど述べた、ユーチューブ動画の尺が短い理由を説明しましょう。

ユーチューブ動画は、長く観続けることが苦痛だからです。

伝え方の神髄は「聞く気のない相手を聞く気にさせる」

ユーチューブの動画は、長く観ていると疲れますよね。それに比べて、テレビ番組は疲れずにずっと観られる感じがしませんか?

その大きな理由の1つに、「振り」と「受け」の有無の違いがあるのです。

リモコンでチャンネルを変える女性の手元
写真=iStock.com/Lyndon Stratford
※写真はイメージです

ユーチューブにアップされた動画の多くは、この構造がないため、メリハリがありません。そのため、ずっと注視していなければ、話の流れをつかめないうえ、大切な部分を見逃してしまいます。

大事なポイントを視聴者自身が考えながら見つけなければいけない(=気が抜けない)。だから、長時間観ていると疲れてしまうのです。

このような経験から、無意識のうちに短めの動画が選ばれるようになり、結果的に動画の尺が短くなったと考えられるわけです。

相手に情報をしっかりと伝え、さらにしっかりと心に残すためには、「鉄則」があります。それは、

相手を疲れさせないこと。
相手に頭を使わせないこと。

たとえば、営業先のお客様や就活の面接官、また、夫や妻にいろいろな話・交渉ごとをする場面でも、「話を聞く側」というのは、私たち(話す側)が思っているほど熱量が高くありません。残念ながら、

相手は、あなたが思っている以上にあなたの話を聞きたいと思っていない。

これが現実です。

逆に考えれば、「聞く気のない相手を聞く気にさせる」ことこそが、伝え方の真髄であると言えます。

当たり前ですが、相手なしにコミュニケーションは成立しません。

同じ話でも、相手の機嫌や体調、そのときの忙しさなど、コンディションの良し悪しで受ける印象が大きく変わってきます。

つまり、情報の伝わり方は相手のコンディションに左右されるということです。