「チャンネルを替えられない」と思わせる仕組み

一体どういうことなのか?

ここからは、番組の制作現場で実際に使われている「構成」と「演出」のテクニックを例に挙げながら、その秘密を解説していきましょう。

これからお伝えするのは、番組を作るうえで最も重要かつ多用されているテクニックです。

まずは、次の2つの文章を見てください。

まったく同じことを言っている、使っている単語もほぼ同じAとB。

しかし、ある要素を入れることで、Bのほうがより強く印象に残る文章になります。

A 社長は、「社員全員の給料を10%アップさせる決断をしたため、会社が大きな成長を遂げた!
B 会社が大きな成長を遂げるきっかけとなった、社長の決断。
それは!
「社員全員の給料10%アップ」

Bは、Aの文章に、テレビ番組でよく使われている、「振り」と「受け」という基本構造を入れたものです。Aに比べて、Bのほうがイキイキとした印象が生まれ、「給料10%アップ」がより強調されていますよね。

この「振り」と「受け」は、番組を構成するうえでとても大事な要素です。これがあるために、「チャンネルを替えられない」「次が気になる!」というテレビ特有の構成を組み立てることができるといっても過言ではありません。

「振り」と「受け」で印象を強める

「振り」と「受け」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

先ほどの例文を「振り」と「受け」に分割すると、次のようになります。

【振り】
会社が大きな成長を遂げるきっかけとなった、社長の決断。
それは!
【受け】
「社員全員の給料10%アップ」

この文章で強調したいのは、「社員全員の給料10%アップ」という部分です。

「受け」の部分には文章の中で最も強調したい言葉を配置します。

その前の「振り」とは、「受け」を説明する言葉と、「振りワード(例文では、それは!)」をセットにした部分のことを言います。

強調したい言葉の直前に、説明と「それは!」や「そこで!」の振りワードを配置する。これが、「振り」と「受け」の構造です。

ちなみに、代表的な振りワードには、「それが!」「それは!」「そこで!」「そして!」「さらに!」などがあります。

この「振りワード」、全て馴染みのある、ありふれた言葉ですよね?

実は、そこがポイントなんです。多くの人は、自然にテレビ番組の“見方”を習得していますから、「それが!」「それは!」などの振りワードがくると、

あ、この直後に大切なポイントがくるんだ!

と無意識に認識し、意識をテレビに集中させます。