『クリムゾン・キングの宮殿』の衝撃
プログレとして認められている最初の作品は何かといえば、キング・クリムゾンのデビュー作『クリムゾン・キングの宮殿』(“In The Court Of The Crimson King” 1969年10月10日英本国発売、以下同)というのが定説である。
無名の新人バンドのデビュー作があのビートルズの実質的最終作『アビイ・ロード』(“Abbey Road” 1969年9月26日発売)をヒットチャート1位から蹴落とし、チャートの頂点に立った――という伝説は事実としては誤りである。なぜなら『アビイ・ロード』は英米で最高位1位だが『クリムゾン・キングの宮殿』は最高位全英5位、全米28位であるからだ。
しかしこのアルバムは、ポピュラー・ミュージックの王者にして1960年代の音楽の牽引者だったビートルズ後、間もなく始まる1970年代の新たなロックの道を切り開いた記念碑的な作品であることは、世界中の音楽ファンから認められている。
キング・クリムゾンと『クリムゾン・キングの宮殿』の魅力については『1970年代のプログレ 5大バンドの素晴らしき世界』中で詳述するが、私自身も、アナログ・レコードA面1曲目の「21世紀のスキッツォイド・マン」の衝撃的な始まりから、B面の2曲目の最終曲「クリムゾン・キングの宮殿」の壮大なラストまで、一寸のスキもなく、圧倒的な迫力と美しさを持って聴くものを打ちのめす、これまでのポピュラー・ミュージック、ロックになかった、まさにプログレッシヴとしかいいようのない作品だと思う。