1960年代末から1970年代にかけて、日本では「プログレッシブ・ロック」が大ブームになった。当時、中学生だったKADOKAWAエグゼクティブプロデューサーの馬庭教二さんは「プログレをひと言で定義するなら、曲が長いということになる。当時は小遣いも限られていて、友達と一緒に聞くのが楽しみだった」と振り返る――。
※本稿は、馬庭教二『1970年代のプログレ 5大バンドの素晴らしき世界』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
「一曲20分」プログレは長い!
プログレの特徴は、何といっても1曲1曲が長いことだ。前稿でふれた定義やら5原則などどうでもいいから一言で説明してくれと言われたら、「プログレは長い」と答えるだろう。
レコード(記録&再現媒体)が普及してのちのポピュラー・ミュージック(大衆音楽)とは、アナログ・レコードの時代においてはまずシングルレコード(SP=ショート・プレイ・レコード)の表面を指すものであった。1曲はせいぜい2~3分である。
これに対しプログレの場合は、アルバム(LP=ロング・プレイ・レコード)の表裏両面(約20分×2で約40分)か、少なくとも片面(約20分)だけでも「通して聴く」ものであった。
その構成は、レコードの表か裏に1曲(20分という長い曲である)、反対の面に短かめの曲が数曲というのが定番である。
なかにはレコードの表裏で全1曲(40分かけてたった1曲)、さらにはそういうものを集めた2枚組、3枚組という大作さえあった(イエスの場合、『海洋地形学の物語』という2枚組アルバムがあるが、ABCD面各1曲なので80分間かけて全4曲しかない)。
すなわち、レコードに針を下ろすとまず20分はひたすら音楽を聴くことになる。だから、自宅や友達の家で誰かと一緒にプログレを聴くと、たいした話もしていないのについつい長居になってしまうのだ。