定年65歳の影響で、不要社員は若くしてさっさと解雇される
民間企業の法定定年年齢の65歳への引き上げと、年金支給開始年齢の70歳への引き上げは当然若い世代を直撃する。定年延長、そして70歳までの雇用確保措置の義務化によって、65歳までの再雇用時代よりは給与も多少アップし、生涯年収も増えるだろう。
一方、本来60歳でもらえる予定だった退職金支給が65歳になり、そんなに長く働きたくない人にとってはデメリットともいえる。
また、定年が延長されると、本来60歳で役職を外れるはずの先輩社員が長く居座ることになる。若い世代の昇進の機会が減少し、いくつになっても平社員という人が増える可能性もある。
それだけならまだよいかもしれない。実は企業も70歳雇用に関して大きな不安を抱えている。大手総合電機メーカーの役員はこう言い切る。
「70歳まで雇用するのはいいが、会社として必要な仕事とその仕事を遂行できるシニアとがマッチングできないと、とんでもないことになる。会社としては必要な仕事もできないシニアを雇ったとしても、負担でしかない」
その負担を解消するには①人件費を捻出するための賃金の削減、②会社にとって不要な社員の早期リストラ――が起きる可能性が高い。
定年65歳&年金支給開始年齢70歳へ引上げで年金1000万円を失う
いわば国の年金制度の維持など社会保障政策を企業が担う条件として、今後経済界から「解雇の金銭解決制度」の導入など解雇規制緩和の要望が強くかるかもしれない。
そして年金支給開始年齢が65歳から70歳に引き上げられると、当然、老後の生活は苦しくならざるをえない。
年金支給開始年齢が70歳になると、年金が増額される繰り下げ受給年齢も当然変わる可能性が大だ。現行の65歳支給の場合、繰り下げできるのは65歳~だが、支給開始が70歳になると、繰り下げも70歳~ということになる。つまり、増額の恩恵は70歳以降に受給しないと受けられなくなる。
現行の65歳支給では、繰り下げして70歳からもらうようにすると42%増額される。それが、70歳支給開始になると、42%増加するには75歳からもらう形にしなければならなくなるのだ。寿命のリミットが決まっている以上、結局、年金収入の総額は減ることになる。
現在の厚生年金の月額平均支給額は約16万6000円(男性)。支給開始年齢が65歳から70歳に延びることになれば単純に5年間で996万円。今の世代と比べると若い世代はもらえるはずだった約1000万円を失うことになる。
少なくとも今の20~30代世代は定年延長に伴うリストラなどの不測の事態や年金支給開始年齢の引き上げを想定し、自らのキャリアプランとライフプランを再設計するべきだろう。