所定の残業時間を超えている場合は雇用保険がすぐに支払われる

この法律で身を守れ!
【雇用保険法】
退職や、会社倒産などで離職した労働者の生活を金銭面でサポートする
【労働基準法第36条】
残業の可否や上限を定める

会社を辞めてカネをもらう方法がある。そう、雇用保険だ。突然の会社倒産や、退職後、次の仕事が決まらない場合に労働者を支える保険制度のことで、またの名を失業保険(失業手当)という。

ATM
写真=iStock.com/Motortion
※写真はイメージです

本来、やむを得ぬ事情によって仕事を失った場合を想定した保険であることから、自発的に会社を辞めた労働者には、給付金は退職後すぐには支給されないことになっている。早く次の仕事を探してもらうためだ。具体的には、ハローワークに求職の申し込みをした日から7日+3カ月が経過した時点で次の仕事が決まっていない場合、給付金が支給される。

だが、自発的に会社を辞めたとしても、ハローワークへの求職申し込みの7日後から給付金が支給される例外がある。

それこそが、残業がきつくて辞めた場合である。

そもそも、残業自体が労働者全員が合意した場合でないと行わせることはできない(労働基準法第36条)。また、社員全員が残業することに合意したとしても、労働者の健康を守るため、残業時間の上限が定められている。

つまり、上限時間を上回る残業をさせられている場合には、自発的な退職であっても会社の違法行為から自分の身を守るために辞めざるを得なかったとみなされ、退職後すぐに雇用保険の給付金が支給されるのだ。

退職前6カ月間のうち、以下のいずれかに該当する場合に適用される。

・連続3カ月以上、月当たり45時間以上の残業をしていた場合
・連続する2カ月から6カ月のうち、平均して月当たり80時間を超える残業が発生していた場合
・6カ月のうち、いずれかの月で100時間以上の残業があった場合

給料の遅配、セクハラ、いやがらせがあれば雇用保険がすぐおりる

残業時間の上限を超えている場合、自主的に退職しても3カ月のインターバルなしで雇用保険の給付金が支給されるのは、会社の違法行為から自分の身を守るためにやむを得ない退職だと認められるためだ。

残業の法定上限を超えていなくても、すぐに雇用保険の給付金がおりる場合がある。それは以下のような場合である。

・入社してみると、雇用契約締結前に見せられた働く条件と著しい違いがあった(絶対的明示事項違反)
・給料の支払額が、雇用契約書で約束した金額の85パーセント以下だった
・給料の1/3を超える金額が、給料日までに支払われなかった
・妊娠中の休暇や、介護休暇中に、不当に働かされた。また、働くことを希望したのに、不当に制限された
・セクハラを受けたものの、会社側が解決しようとしなかった
・職場全体ないし、一部の人から嫌がらせを受けたが、会社が解決しようとしなかった

なかには、これらのトラブルで泣く泣く会社から脱出したにもかかわらず、雇用保険を即受給する手続きをしなかった人もいるかもしれない。法律さえ知っていれば、口惜しいかな、実はカネの面では命綱がつくようになっていたのだ。ちなみに、雇用保険の給付金は、所得税が一切いかからない。

また、ハローワークへの求職申し込みにあわせて最寄りの自治体に国民健康保険料の免除・猶予を申し込み、可能なら生活困窮者自立支援法に基づいたサポートを受けると、さらに金銭面の不安が軽減される。