長時間労働は重篤な病気になるリスクがある

そもそも残業を規制するのは、長時間労働が続くと、心疾患などの重篤な病気にかかることが科学的に証明されたからだ。そのため、残業規制以外にもいくつもの縛りがある。

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代表的なのが、労働安全衛生法と自殺対策基本法だ。労働安全衛生法は、有害な化学物質を扱ったりする仕事に従事する労働者を保護するために幾度も見直されてきた。もちろん、一般的なサラリーマンにも心身の健康を保つための考慮がなされている。中性脂肪とコレステロール値のチェックで、年一回お世話になる職場の健康診断もその恩恵のひとつだ。

長時間労働については、労働安全衛生法第66条の8第1項に規定がある。時間外・休日労働が月当たり80時間を超える労働者が希望した場合、医師の面接を受けさせる義務を定めているのだ。

また、自殺対策基本法第4条では、長時間労働などの影響から自死に至る労働者の歯止めをかけるため、会社経営者は国や自治体の方針に従わなければならないことが決められている。

悲しいことに、疲労が蓄積し、長時間労働が常態化してくると疑問を感じなくなるどころか、自分を責めるようになる人が多い。仕事への責任感の強さには敬意を表したいが、それでも限界はある。

最近自分を責めがちだと思ったら、自分の思考を疑い、医師や法律家などに助けを求める勇気を持ってほしい。目安としては、仕事のことで「No!」と言えるかだと思う。

会社は、ひとりくらい持ち場を離れても回るようにできているし、そうでなければいけないのだ。ここは、勇気を持って、自分の心身の限界を周囲に告げる勇気を持っていただきたい。

タフな人であっても精神疾患を発症する可能性はある

困ったことに、メンタルがやられる一歩前の状態の人は、はたから見て、とても元気に見えることが多い。そのため、悪意なく仕事を振ってしまうことがあるかもしれない。

管理職はもちろんだが、それ以外の人も、出勤簿などをチェックし、過重労働になっている人は意図的に休んでもらうことを忘れないでほしい。また、えてして産業医の診察を拒む人も多いので、法律で定められた労働時間を超えるなら、医師の診察を受けさせたほうがよいだろう。

過労からメンタルがやられると、最悪自死に至るケースもある。悪意なく仕事を振っただけで自死させてしまい、遺族から損害賠償を起こされることもあり得る。また、そこまで同僚や部下が追い詰められていたことに気づかないまま仕事を振り、自分が追い詰めてしまったと長い期間、良心に責められ続けることにもなりかねない。

精神疾患は特定の人がかかる病ではない。屈強な人、タフを自認する人でも発症する。生活の糧を得る場所で命を落とすなど、それこそ本末転倒もいいところだ。職場全体が不幸になりかねない。皆で理解を深めあい、予防していくことがきわめて重要だ。

ここがPOINT!
・メンタルや身体を壊す原因となる長時間残業・休日出勤は、厳しく規制されている
・時間外・休日労働が月80時間を超える者が希望した場合、企業は医師の面談を受けさせなければならない
・長時間労働や精神的なストレスから、メンタルの不調や自死に至る深刻な状態を避けるために、自殺対策基本法ができ、会社側は国や自治体の指導に従う義務が明記された