自己都合の退職では失業保険は支給されない。しかし、会社側が問題を抱えていれば、支給される場合もある。ライターの松沢直樹氏と弁護士の山岸純氏は「残業やセクハラなど、会社の違法行為を証明できれば待期期間なしで失業保険を受け取ることができる」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、松沢直樹、山岸純(監修)『おっさんず六法』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

『おっさんず六法』より
イラスト=髙栁浩太郎

そもそも従業員に残業させることは違法

この法律で身を守れ!
【労働基準法第36条】
時間外および休日労働についての規定
【自殺対策基本法第4条】
国や自治体が決めた働きすぎによる自殺防止対策に対して、会社経営者が協力する義務を定める
【労働安全衛生法第66条の8第1項】
残業が多い労働者のうち、希望者に対して医師の面接を行わせる義務を定める

──今の会社は待遇がよく満足している。だけど、あまりにも残業が多くて身体がツライ。月に200時間は残業していて、うつ病を発症しないか心配だ……。

よくある話だが、そもそも残業は違法だということはご存じだろうか? 労働基準法第36条では、週に40時間を超えて働かせることを禁止しているが、ほとんどの会社は従業員に残業を強いているのが実情だろう。上記のように奴隷に近い長時間労働を強いている企業だって少なくない。

これにはカラクリがある。従業員の代表者として選任された社員が残業することに合意した書類を労働基準監督署に提出すると、残業が可能になるのだ。これは、労働基準法第36条の規定が根拠となるので、「36(さぶろく)協定」という。会社が偽造すれすれでこの書類を提出しているケースも多い。

とはいえ、2019年4月1日からは長時間残業に対して厳しい罰則が設けられることとなった(中小企業は2020年4月1日から)。残業が許可された場合でも、以下の条件を超える場合は、違法として処罰される。

・時間外労働が年間360時間以内
・1年を通じて、毎月の時間外労働と休日労働が100時間未満
・1年を通じて、常に時間外労働と休日労働の合計について「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」がすべて1月当たり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超える月が、年間通して6カ月以内

これを超える残業をさせられているなら、社外へ助けを求めてほしい。タイムカードのコピーを取り、労働基準監督署に訴えるもよし、弁護士や労働組合を使って残業減を約束させるのもよいだろう。