月3万円のバイトを30年続けたら1080万貯金でき、老後の蓄えに

筆者は母親に視線を向けたあと、ゆっくりとした口調で伝えました。

「正社員でなくてもお金は何とかなりそうです。例えばアルバイトで月3万円の貯蓄を30年続けた場合、3万円×12カ月×30年で1080万円になります。月4万円なら1440万円です。アルバイトでもご長男の必要な資金の大部分をまかなうことができます。計算はあくまでも目安ですが、それでも『正社員にならなければ生きていけないのか?』というとそんなわけでもなさそうです」

複数枚の1万円札
写真=iStock.com/StockGood
※写真はイメージです

「確かにアルバイトでも何とかなりそうですね。ですが、長男は今まで仕事をしたことがありません。一体何から始めればよいのか……」

母親の不安ももっともです。

働くことに悩みを抱える15~49歳を対象にした「サポステ」

そこで筆者は、地域若者サポートステーションの説明をすることにしました。

地域若者サポートステーション(通称サポステ)では、働くことに悩みを抱えている15歳から49歳までの方を対象にした支援を行っています。サポステは厚生労働省が委託したNPO法人や株式会社などが運営しています。主な支援内容としては、相談、スキルアップ講習、職場体験です。

仕事の悩みに関する相談にはキャリアコンサルタントの資格を持つ専門家が対応してくれます。スキルアップ講習には、コミュニケーションや社会人のマナーを身に着ける講座、パソコン講座(ワードやエクセルの基本的な操作を覚える)などがあります。

職場体験は、協力企業に出向いて実際に仕事をしてみるというものです。このようにサポステではさまざまな支援を受けることができ、費用は交通費などの実費を除き無料となっています。

筆者は実際に何度かサポステへ見学に行ったこともあるので、その感想も交え母親に提案をしてみました。

「支援者の方々は温和で親しみやすかったですし、利用者の方にも話を聞いてみたところ『最初は不安や怖い気持ちがあったけど、勇気を出してサポステに来てよかった』と言っていました。もしご長男に働く意思があるようでしたら、サポステを利用してみるところから始めてみるのもよいかもしれません」
「確かにサポートステーションを利用するのはよさそうですね。でも、果たして長男一人で相談に行けるかどうか……。何かよい方法はありますでしょうか?」
「おっしゃる通り最初からご長男お一人で相談に行くのはハードルが高いかもしれませんね。私もお母様と同様の疑問を持ったことがあるのでサポステに聞いてみました。すると『最初は保護者の方とご一緒に相談に来るケースも多いですよ』という答えが返ってきました。なので、最初のうちはお母様とご一緒に相談に行くことは全然アリです。慣れてくればご長男お一人で通えるようになるでしょうし」
「なるほど、そういう方法もあるのですね。よく分かりました。今日いろいろお話いただいたことを長男にも伝えてみます」

そう答えた母親の表情はだいぶ柔らかくなっていました。