「物理的な接触が必要な仕事」の需要は低下
最近話題のAIが「職業名」として入っていませんが、「AIの下地となる作業をする職業」がランキングに入っていることに気づかれたでしょうか? データサイエンティストや数学者がまさにそれで、AIを設計したり仕組みを作る職業の需要はさらに高まっていきます。
またこれらのランキングは2020年のコロナ禍以前に作成されたものですが、コロナ禍でデジタル化が急速に進んでいるので、「数値やデータを扱う仕事」「IT関連の仕事」「医療関連の専門職」の需要は益々高まります。
2020年後半には、amazonを始めとするIT系大手の収益は大幅に増加し、コロナ後の世界の勝ち組となったことからもわかります。一方で、小売業などの「物理的な接触が必要な仕事」の需要は低下する一方です。
また3つのカテゴリーの他に、日本の人が注意してこの表を見るべき点は、企業名ではなく、あくまで「職業」分類でランキングが作成されている点です。
日本の「仕事」ランキングは、通常企業名でのみランキングされ、まるで「企業ミシュラン」のようになっていますが、常識的に考えた場合、企業の業態や市場の動きが変われば、企業内で仕事の需給に変化があるのですから、しごく当然の話です。
北米や西側欧州では、同じ企業内でも職種により報酬も待遇も変わるので、ランキングが職業別に作成されるのは当たり前のことです。
欧州大学の修士号の専攻リスト「約3割はビジネス&経済」
理数系や技術系の報酬が高く、条件も良いのは、アメリカだけではなく、イギリスでも同じです。
図表2はイギリス統計局による様々な職業の年収の中間値です。最も高いのは裁判官など法律関係の仕事ですが、ついで、電気工学技師、金融機関管理職、金融機関のマネージャーなどの報酬が高くなっています。
欧州の学生や、欧州に留学する学生は、このような「良い仕事」の傾向を機敏に感じ取っているようです。若者の失業率が高いため、それだけどんな仕事をするべきか、真剣に考えているのでしょう。
欧州や、その他の国では、日本と異なり、大学や大学院での専攻が就職に直結していることが少なくありません。そのため、大学や大学院での専攻は、将来つきたい職業に関連したものにする人が多いのです。
以下は、欧州の大学で、英語で提供されている修士号の専攻のリストですが、約3割はビジネス&経済で、ついでエンジニアリング&技術だというのが興味深いです。
ビジネス&経済:28%
エンジニアリング&技術:21%
社会科学:13%
自然科学:9%
人文&芸術:8%
生命科学&医療:6%
つまり、「最高の仕事ランキング」で示されたように、数学系や技術系の仕事は需要があるので、希望する学生が多く、授業を提供する大学院が多いのです。