オレオレ詐欺の火付け役は半グレだった

暴力団の勢力が衰退するとともに、半グレによるとされる事件が目に見えて増えてきました。暴力団というオオカミが暴排条例で身動きが取れなくなり、半グレという野良犬の活動領域が拡がった観があります。とりわけ、オレオレ詐欺の火付け役は半グレでした。まずはこの名称がどう扱われてきたかを見てみましょう。

溝口敦氏の著書『ヤクザ崩壊半グレ勃興(新装版)』(講談社+α文庫2015年)をみると、2000年から2010年頃まで、当時は半グレという言葉はありませんでしたが、昔やんちゃしていた人、イベサー(大学のイベントサークル)加入者などが、暴力団と組んだり、単独で行ったりと、様々な詐欺(出会い系サイトやアダルトサイトの未納金があるといった架空請求詐欺、息子を装い、痴漢などわいせつ事件を起こしたので示談金を払わなければならないといったオレオレ詐欺など)に関与していた様子がうかがえます。

ヤンキーやチーマー、暴走族などの「昔やんちゃしていた元不良」が詐欺集団を形成し、どこかで挫折した普通の若者たち(就職氷河期の被害者であるワーキングプア、ネットカフェ難民、若年ホームレスであり、その中の肉食系が、少なくとも半グレ系と思考や気質を共有)がそれに加わり、やがて「半グレ」とカテゴライズされていった、ということが書いてあります。

2013年に「半グレ」という用語が登場してきた

2013年3月、警察庁は、この種の集団は、暴力団と同程度の明確な組織性は有しないものの、これに属する者が集団的に、または常習的に暴力的不法行為等を敢行しており、中には暴力団等との密接な関係がうかがわれるものも存在しているとして、「準暴力団」と位置付け、実態解明の徹底、違法行為の取締りの強化及び情報共有の推進という三つの柱からなる対策を推進するよう都道府県警察に対して指示しています(「準暴力団に関する実態解明及び取締りの強化について(通達)」平成25年3月7日付け警察庁丁企分発第26号)。

同年、警察政策学会資料第71号平成25年7月「『これからの安全・安心』のための犯罪対策に関する提言」にも、「半グレ」という用語が登場し、その中で、「注」として「『半グレ』を、暴力団とは距離を置き、堅気とヤクザの中間的な存在である暴走族OBであるとしている」、と溝口敦氏の『暴力団』(新潮新書2011年)における記述が紹介されています。溝口氏の筆による『暴力団』の該当箇所は、後述します。

朝日新聞は、2013年3月20日の朝刊で、半グレとは、「暴走族の元メンバーやその知人らが離合集散しながら、緩やかなネットワークで行動を共にするグループ。『半分グレている』の略などが由来で、暴力団と結びついて犯罪組織化している実態もある」と定義しています。