2013年頃は半グレといえば暴走族OBだった

さらに、半グレは準暴力団である、と当局が位置付けたことを紹介しています。

「警察庁は『治安を脅かす新たな反社会勢力』として『準暴力団』に位置づけ、全国の警察に活動実態を把握するよう指示した。首都圏を拠点とする暴走族『関東連合』や『怒羅権(ドラゴン)』の元メンバーらのグループが該当する。昨年9月に東京・六本木のクラブで、客の男性が目出し帽の集団に襲われて死亡した事件では、関東連合の元リーダーの男らが警視庁に逮捕された」

溝口氏が想定している当時の半グレは、関東連合OBやドラゴンOB等でした。しかし、暴排条例で暴力団の締め付けが続く現在まで、大小さまざまなグループの半グレが、雨後のタケノコのように、あちこちで勃興しているのです。筆者は、半グレ当事者たちへの取材を通して、2013年頃に「半グレ」と呼ばれた集団と、今日の半グレとでは、その性質や活動において異なってきていると考えるに至りました。

関東連合OBやドラゴンOBという半グレはOBというだけあって、20代後半以上の年齢でした。たとえば前述した朝日新聞の解説にもある、2012年9月の関東連合OBによる六本木クラブ襲撃事件当時、判決で主犯格とされた石元太一は30歳くらいの年齢です。しかし、筆者の見るところ、以降、低年齢化が進んでおり、半グレのハードルも低くなっているように思えます(本人は事件への関与を否定して法廷闘争を続けている)。

半分どころか全部グレている

筆者が聴取した半グレも、3人は20代前半ですし、就労支援で関わった少年は2人とも10代です。今では、悪い事を集団で行う者を一括して「半グレ」と括る傾向があるようです。東京の民暴の専門家である、東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長の齋藤理英弁護士は、東京商工リサーチのセミナーにおいて、半グレに言及し、警鐘を鳴らしています(2019年12月19日開催「特別情報セミナー反社リスクに備える・与信担当者が知っておきたい反社対策」)。

「半グレは定義が曖昧だが、新たな反社会的勢力と評価して差し支えなく、準暴力団や(暴力団)偽装離脱者などを含む概念だ。半グレの実態は半分どころか全部グレている」

齋藤弁護士の指摘にあるように、半グレは半分どころか全部グレており、暴力団の偽装離脱者までをも含みます。この、安直かつ幅広く犯罪者を網羅した十把一絡げ的な「半グレ」というネーミングが、半グレについて何だかわかりにくい不穏感を作り出しているようです。