占拠は短期間で終わるが、繰り返される
海上民兵が魚釣島を占拠したとしても、長期にわたり占拠するためには水や食糧などが必要になる。魚釣島には小さな滝があるため、水は確保できる。食糧も、300頭以上生息している野生のヤギで食いつなぐという方法がある。もともと島民が居住していたのだから、ある程度の期間占拠することは不可能ではない。
ただし、テントを張って占拠しているだけでは実効支配にはならない。軍隊の駐留や建造物などを設置する必要がある。それ以前に、日本の警察特殊部隊(SAT)がヘリコプターや小型船で魚釣島に上陸し、逮捕される可能性が高い。
海上民兵は漁船による機雷敷設の訓練も受けているため、警察や自衛隊が船で接近することを阻止するため、魚釣島上陸後は脱出経路を除いて島の周囲に機雷を敷設、さらに海岸には地雷を撒くだろう。現に南シナ海で活動している三沙海上民兵は漁船による機雷敷設訓練を行っている。
こうして、陸上自衛隊の水陸機動団の魚釣島奪還作戦を妨害するのだ。
中国が尖閣諸島を重要視する本当の理由
防衛省が発表している日本領空に接近した中国の戦闘機や爆撃機、海軍艦艇の動向を見ると、中国は沖縄本島と宮古島の間の海域(いわゆる宮古海峡)をかなり重視していることがわかる。もし、魚釣島などに地対艦・地対空ミサイルを配備されてしまったら、宮古海峡を自由に通過できなくなる。
それだけでなく、台湾を併合する際にも中国にとっては厄介な存在になる。海軍艦艇や軍用機が台湾と与那国島に挟まれた海域から太平洋に抜ける際にも、魚釣島に日本の地対艦・地対空ミサイルが配備されていたら、中国軍の作戦に問題が生ずるからだ。
果たして、延々と続く「グレーゾーン事態」に、日本政府はピリオドを打つことができるのだろうか。尖閣諸島付近の海警局船舶の動向がほぼ毎日報道されているために、ともすれば日本国民の感覚がマヒしてしまうかもしれない。
これでは中国の思うつぼである。これまでの経緯を振り返ると、外交交渉で問題が解決されることはないだろう。日中関係を俯瞰してみると「南京大虐殺」に代わり尖閣諸島の領有権問題が浮上したことがわかる。
つまり、中国にとって、反日を煽るために尖閣諸島が使われていると見ることもできるのだ。もし、習近平の長期政権に対する国民の不満のガス抜きに尖閣諸島が使われているとしたら、尖閣諸島の領有権問題は長引くだろうし、海警局船舶の動向も過激になっていくだろう。