親は子どもの中学受験にどう関わればいいのか。プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康氏は「算数の解き方として、方程式を教えてしまう親がいる。それはよくない。算数と数学はそもそも思考方法が違うからだ」という――。

※本稿は、西村則康・高野健一『中学受験!合格する子のお父さん・受からない子のお父さん』(ウェッジ)の一部を加筆・再編集したものです。

宿題に困っている父と息子
写真=iStock.com/Imgorthand
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5分刻みで学習スケジュールを作成する「エクセル父さん」

その予定表を見たとき、思わず目を疑ってしまった。

「お父さん、これを全部やらせるつもりですか?」
「そうですよ。このくらいやらなければ、あと2年で開成には行けません!」

マモルくんは、大手中学受験塾に通う4年生。その塾は難関中学に強い塾として知られているが、現時点でのマモルくんの成績は最下位クラス。しかし、お父さんはこの塾に通っているなら、最難関中学の開成中を目指すのが当然と思っている。

小学生の子供は成長の発達段階にいるため、この先に伸びていく可能性は十分あるが、偏差値40レベルの学力の子を、偏差値70レベルの開成中に合格させるというのは、中学受験専門のプロ家庭教師である私でも、正直厳しいというのが本音だ。しかし、お父さんは「死ぬ気で頑張ればできる」と思い込んでいる。

そして、渡されたのが先の予定表だ。予定表はエクセルに1週間単位で組まれており、1日のスケジュールも「計算ドリル15分」「休憩5分」「算数の復習55分」「休憩5分」といったように5分刻みにこと細かく書かれている。

でも、それを小学生にやらせてみたところで、できるはずがない。計算問題1つ解くにも苦戦しているマモルくんには、予定の半分でお手上げ。そんなマモルくんを見て、お父さんは「お前の努力が足りないから伸びないのだ!」と怒鳴りつける。

子供が「大人と同じ頑張り」をするのは無理

実は今、中学受験家庭で、マモルくんのお父さんのようなタイプの人が増えている。こういうお父さんの共通点は、仕事で成功している人が多いこと。自分が立てた業務目標に対し、自分も部下も頑張り、結果を出した。そうやって成果を出してきたから、自分のやり方に自信があるのだ。でも、それができたのは、大人だから。大人は自制心があるし、仕事となれば多少無理をしてでも頑張れるだろう。だが、小学生の子供にそれと同じことを求めるのは間違っている。なぜなら、子供にはまだその力が備わっていないからだ。

人生経験が浅い子供は今がすべてで、遠い先の未来に向かって、毎日同じモチベーションで頑張ることなどできない。気分が乗っているときもあれば、やりたくないときもあるし、学力がグンと伸びるときもあれば、一気に下降するときもある。そうやって日々変化している中で、親に決められたスケジュール通りに勉強なんてできるはずがない。