一番大事なのは、どのような親子関係を築けるか
では、なぜお父さんは教えたがるのか?
おそらく、子供の前で“デキルお父さん”をアピールしたいのだろう。そんなお父さんの口癖は、「何でこんな問題が分からないんだ!」「いつまでかかっているんだ!」。その吐き出された言葉を受けとった子供は、「俺はすぐ分かるのに」「俺だったらすぐに解いてしまうのに」という発声されなかった父親の気持ちを感じとる。
中学受験は、お父さんの自慢をアピールする場ではない。主役はあくまでも子供であることを忘れてはいけない。それを無視して、子供の足を引っ張るのは、「百害あって一利なし」だ。
では、中学受験にお父さんは必要ないのか?
そんなことはない。お父さんにはお父さんの役割がある。いや、お父さんにしかできない大事な役割がある、と言った方が正しいだろう。
それは何か?
世の中にはたくさんの中学受験本があるが、そのほとんどがお母さんに向けて書かれたもので、意外にもこれまで“お父さんのための中学受験本”が存在しなかった。だからだと思う。お父さんたちは、今の中学受験がどんなものであるか、小学生の子供はどんな成長段階にあるのかということをよく理解できていないように感じる。正しい情報がないから、自己流のやり方を押し通そうとしてしまう。でも、勉強でもそうだが、正しいやり方を知れば、どんどん良くなっていく。
私は中学受験におけるお父さんの役割はとても大きいと思っている。ぜひその力を発揮し、親子の絆を深めてほしい。中学受験の目標は志望校に合格することだが、その過程でどのような親子関係を築けるかが、実は一番大切なことなのだ。幸せな中学受験とは、そのことを言うのだと思う。
(構成=石渡真由美)