朴槿恵政権と安倍政権による「歴史的な和解」は実らず

この難題を韓国の朴槿恵政権と安倍政権は難しい交渉で乗り越え、2015年12月28日、解決の合意がまとめられた。それまで韓国の被害者側が最も強く批判をしていた「国庫からの支払いのない被害者への償い金は欺瞞ぎまんで責任の拒否」という主張を受け入れ、日本政府は韓国「治癒財団」に対し10億円を国庫から支出することを表明した。

さらに河野談話の認識を前提にした上で、「道義的責任」という言葉を使わず、「政府は責任を痛感している」と述べて、安倍晋三首相からの謝罪の気持ちが伝えられたのである。

この歴史的な和解は実らなかった。2018年挺対協は「正義記憶連帯」と名前を変え、その強い圧力をうけた韓国政府女性家族部は、2018年11月21日、「治癒財団」を解体したのである。財団の会計報告や残余額の今後の活用などについて一切発表のない、ずさんとしか言いようのない対応だった。

しかも話はここで終わらなかった。

2021年1月8日、慰安婦問題についてソウル中央地裁は、慰安婦によって訴えられた日本政府に対し、「本件の行為は日本帝国によって計画的、組織的に広範囲に強行された反人道的犯罪行為であって国際強行規範に違反するものであり、当時の日本帝国により不法占領中であった韓半島内でわが国国民である原告らに対して強行されたものであって、たとえ本件行為が国家の主権的行為であっても国家免除を適用することができず、例外的に大韓民国裁判所に被告に対する裁判権があるといえる」と判示したのである。

日本政府は、主権免除の立場より、猛反発をした。

さらに、3月24日にはもう一つの慰安婦対日本国案件の最終弁論が予定され、5月から7月の間に判決が出される予定となっている。

韓流ブームの裏側で韓国側の「法理」は2004年から顕在化

戦後の日韓関係は少しずつではあっても確実に関係を改善してきた。日本側は韓国人の心の痛みへの理解を深め、韓国側はそういう日本の変化を歓迎した。特に1990年代のポスト冷戦期において日韓関係は大いに進展し、1998年の小渕恵三首相と金大中大統領の会談とそれに続く文化関係の開花は、両国関係を最高のレベルに引き上げた。

2002年に韓国で放送され、2003年から2004年にかけて日本で放送された韓流ドラマ「冬のソナタ」の大ヒットによって、韓国は、民主主義・経済発展・国際政治力に加え、東アジアにおける優れた文化力をも備えるに至った。

通常、成長は余裕を生み、余裕は他者への寛容を生む。しかしながら、日本から見ると韓国が真に尊敬できる国になり、ようやく日韓に「歴史の終わり」がくるかもしれないと思ったその時に、全く真逆な動きが韓国で顕在化した。

2004年3月5日、「日帝強占下強制動員被害真相究明等に関する特別法(真相究明法)」が成立、この法律に基づく調査として、2005年に入り「韓日会談文書公開の善後策に関する民官共同委員会(民官共同委員会)」が設立された。