同根の問題として同時進行し始めた二つの問題

「法弾」により「戦後日韓関係という過去を清算する」韓国側の動きは2004年以降、一貫している。これに対して、「謙虚さを持って身を律し」「話し合いによって両国間の信頼を強化し」「いずれかの時点での和解を待つ」という日本側の毅然きぜんとした態度がくだけたわけではない。最も大事な動きは、2015年8月の安倍談話と12月の慰安婦合意だった。

にもかかわらず、特に2018年以降、両国関係は韓国「法弾」の力によって確実に壊されてきたように見える。皮肉なことに1965年の法的処理があまりにもしっかりしていたので、新たな「法理」を使わずに過去の清算ができない局面に追い込まれたのが徴用工問題であり、ここが最初の対決の場となった。

そして2021年に始まった慰安婦に関する2つの裁判が今その第二の対決の場となっている。同根の問題として同時進行し始めた2つの問題がこのまま進行するなら、日韓関係がさらに悪化の一途をたどることは不可避のように思える。

局面転換の機会となるバイデン政権の登場

筆者は、さらなる日韓関係の悪化は、日本の国益にならないと考える。それを回避するためには、韓国の現代版義兵が正面から「法弾」を打ちかけてきている時に、これをそのまま打ち返すのではなく、これを迂回うかいし、義兵の提供する場ではない日本の戦略の中で韓国と対峙する複合戦略を創ることが要諦ではないかと思う。

少なくとも、そういう機会が少しでも見えたなら、迅速果敢にその機会の窓を開くことこそ求められるのはないか。

そして今、まさにその機会が訪れたように思える。米国バイデン政権の登場である。

バイデン政権にとっての世界戦略、国際場裡での最大の問題は、中国の習近平政権との対峙である。中国に対し、「礼をわきまえた対話」路線をとり「共通利益のある所では協力」することはあっても、根幹の構造対立は極めて根の深いものがある。