「機会の窓」は数カ月。動かなかった対ロ外交の轍を踏むな
外交においてタイミングの重要性は、語っても語りきれない。
筆者がかつて直接携わった日ロ関係の正常化がいまだに実現しないのは、日本外交が「機会の窓」が開いた時に迅速果敢に動けなかったことをもって最大の原因とする。日韓関係においてその轍を踏むことはなんとしても避けていただきたいと思うのである。
もう一つある。日本と韓国の歴史は、7世紀の白村江の戦い、16世紀の文禄・慶長の役、そして20世紀の韓国併合の3回を除き、総じて平和な関係で共存し、前の2回における和解のプロセスは見事なものがあった。「法弾」に対しては戦わねばならない。同時に今、日本側に求められるのは「法弾」を撃つ義兵への憎しみや無関心ではなく、自国に対するものを含め、謙虚で大局的視点をもった「歴史観」ではないだろうか。
もちろん、そのように行動したからといって、結果が保証されているわけではない。しかし、開かれた「機会の窓」に入って全力を尽くさずして日韓外交崩壊を食い止め、日本の国益を全うすることはあり得ない。
現下の「機会の窓」が開かれているのは、慰安婦裁判の今後やバイデン政権の政策形成のタイミングからすれば、おそらく数カ月が限度だと思う。関係者の勇気と行動を伏してお願いする次第である。
(2021年2月11日筆)