お金を使っても消えてなくなるわけではない

政府が企業にお金を使うことに対してはあまり抵抗感がなくて、むしろいいこと、まともな経済政策だと思われています。それなのに、人々にお金を渡すことは「それは経済政策じゃなくて、ばらまきだ」と、とても悪いことのように思われています。そこのところから、まず考え直してみることが必要なのかもしれません。

「お金を使うと、消えてなくなっちゃう」と思っている人はかなり多いです。「お金は使ってもなくならない」ということを私はよく言うのですけれども、それに多くの人が驚きます。

石油などの資源と同じようにお金を考えてしまうタイプの人が、政治家や官僚の中にもいるんですよね。石油資源だったら使えばその分は消えてなくなります。でもお金は、使ってもなくなりません。マクロ経済について知識のある人は、一瞬「うん?」と思っても、すぐに「それはそうだよね」と理解してくれます。

私がお金を使ったら、私の手元からはなくなるけれども、そのお金は誰かの収入になります。カネは天下の回りものということで、どんどん所有者が移っていくだけで別にこの世からなくなるわけではないですよね。

個人への直接給付はムダづかいではない

ですから「お金を使う」ということに関して、個人にとってのムダづかいというのは存在しますが、国全体がお金をムダに使うということは基本的にできません。国の中でお金の所有者が移っているだけで、消えてなくなってしまうわけではないんです。

井上智洋・小野盛司『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(扶桑社)
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そういう意味では金や銀にある意味近いですね。実際、金や銀がお金の役割を果たしていた時代もありました。しかし、今のお金は金や銀とも大きく違う特色があるんです。

それは、「お金は無から作れる」ということです。

つまり、紙幣を印刷すれば済む話です。そもそも今は紙幣ですらなく、ほとんどがコンピュータ上のデータでしかありません。「キーストロークマネー」と呼ばれることもありますが、キーボードを叩けばお金は作れてしまうものなのです。

でもそれができるのは、政府中央銀行と民間銀行だけです。個人はできません。あるいは、できたとしても普通は流通しません。日本円を作れるのは、政府中央銀行と民間銀行だけです。

金や銀ですらないただのデータなのですから、お金も無から作り出してどんどん使ってもらえればいい。それによってみんなが使いすぎればインフレになるので、「じゃあインフレにならない程度にしましょう」と調整すればいい。そもそも、国の目標として緩やかなインフレ好況にしたいという状況です。

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