その結果、ロビンフッドは決済機関に預ける保証金の不足に直面し、個人投資家による特定銘柄の取引を一時制限した。その一方で、ヘッジファンドは通常の通りにオペレーションを行った。そのため、ロビンフッドの判断に関して米民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員などが「個人投資家は取引の機会を奪われ、その一方でヘッジファンドは自由な取引ができる」と批判した。
このゲームは長続きしそうにない
短期的に、米国など世界の金融市場でマネーゲームの兆しがより鮮明となる可能性はある。世界の主要中央銀行は低金利の環境を重視している。ワクチンの接種開始は先行きへの楽観を支える。韓国では個人投資家などが政府に株式の空売り禁止措置の延長を求め、キャンペーンのためにバスを走らせている。先行きに強気な投資家は多い。
ただし、少し長めの目線で考えるとマネーゲームは持続可能ではない。1月下旬から2月初旬、ゲームストップ株は下落した。それは、株価の高騰が一時的な投資家心理の変化に影響されたものであり、長く続くものではないことを示している。また、株式などの資産価格がいつまでも上昇することもない。カネ余りと過剰な楽観や成長への期待が支える世界的な株高は、利益確定の動きの増加などによって遅かれ早かれ調整局面を迎えるだろう。米国などで株式バブルが発生していると考える経済の専門家は多い。
利便性と市場の透明性、どうバランスをとるか
それに加えて重要なのが、実態に合った金融規制だ。足許、ヘッジファンドは相場を歪めると考える人は多い。しかし、その見方が正しいとは言えない。過去もヘッジファンドは空売りを行った。また、ゲームストップの改革に注目して早い段階から株を買った機関投資家もいる。重要なのは、企業が長期の存続を目指し、収益を得る力を高めることができるか否かだ。それを見極めようとする投資家の意見が売買を生み、株価が形成される。
長い目で見ると、株式の価値は企業の持続的な成長力に収斂し、それが投資家の利得と損失に影響する。
ロビンフッドは手数料の無料化によって利用者を急速に増やした。同社は金融機関に個人の注文を回送して収益を得た。その一方で、財務力やITシステムの安定性、データ取り扱い、さらには投資家保護など、同社の課題は多い。SNSだけでなく同社が今回の一部銘柄の乱高下と米株式市場の変動性上昇に与えた影響も軽視できない。
金融サービスの利便性と金融市場の透明性・公平性をどう均衡させるか、政策当局や実務家、経済や法律の専門家を交えた活発な議論の重要性は高まっている。