「正しい」道より「楽しい」道を

仕事に対する価値観も変わってきたという。「以前は、『お金をもらっているんだから、仕事なんだからやらないと』という感じでした。“MUST(マスト)”で動く世界しか知らなかった。でも『社会を良くしたい』『ほかの人を助けたい』という気持ちで、本業を持ちながらも2枚目の名刺をもって自主的に活動している人が多い。そういう世界があることがわかって、今まで見ていた世界の狭さを知りました」

「それに、『やりたい!』という気持ちの人と一緒にやると、こんなに楽しいのか、とも思いました」

「有名大学を出て、有名企業のグループ会社に就職して……と、『あるべき姿』を求めて、“正しく”生きようとしていたけれど、もっと楽しんで生きた方がいい。『私は何をやるべきなのか』と悩んでいたところがあったけれど、『やらないといけない』ことを探す必要はなくて、『とりあえず、おもしろそうだからやってみよう』というくらいの軽い気持ちでいいのかもしれない。楽しみながら、流されていけばいいのかもしれないと思うようになりました」

本業でも、チームのマネジメントを任されることが増えている竹田さんだが、二枚目の名刺でのプロジェクト・デザイナーの経験が、変化を与えているようだ。

「会社外で取り組む二枚目の名刺の活動では、それぞれ本業が忙しくなることもありますし『しんどい時に“しんどい”と言えるチーム』を作らないと持たないんです。以前の私は、仕事では『しんどいけど、我慢して自分で頑張れ』と言ってしまうほうでした。自分も、しんどくても、仕事なんだから我慢して、自分自身でなんとかしないといけないとダメだと思っていた。でも今は、『1人で抱え込まないほうがいい。しんどい人がいれば、自分含めてみんなで助けてあげればいいじゃん』と思いますし、職場でもそう言うようにしています」

今後、二枚目の名刺の活動をどのように続けるか、まだ決めていないが、「これからも自分にできる形で関わっていきたい」と話す。

「『社会貢献=自己犠牲』ではありません。プロボノでもボランティアでも寄付でもいい。どの形が『良い/悪い』というものでもない。社会の課題に関心を持ち、どんな形でもいいので、一歩を踏み出す人が少しでも増えたらいいと思います。そこに私も貢献していきたいです」

(構成=髙田 功)
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