手応えを感じられなかった最初のプロジェクト
「二枚目の名刺」は、会社の外に活動の場を広げて自分の夢を実現させたい、社会に役立ちたいと考える社会人が集まる団体だ。夢を実現するための複業を支援しているほか、社会貢献したい社会人と支援を求めるNPOなどの団体をコーディネートする。一般的なプロボノとは違い、支援団体に専門的なスキルを提供することよりも、支援団体と想いでつながることを重視している。
竹田さんが目にしたのは、さまざまな業種・職種の社会人がチームを組み、NPOなど社会課題に取り組む団体と一緒に活動する3~4カ月のプロジェクトの案内だった。「会社の仕事を続けながら、違う世界を見ることができるのはおもしろそう。ただ悩んでいても仕方がない。とにかくやってみよう」と考えて飛び込んだ。
最初に参加したのは、“誰もが病気になっても自分らしく生きられる世の中をつくる”ことを目指し、がんなどの病気の人やその家族を支援する一般社団法人CAN netのマーケティング施策を考える3カ月間のプロジェクトだ。プロジェクトのゴール設定、進め方などもすべてチームで決めていく。しかし、ゴール設定からなかなか決まらず、あまり成果を感じられないままでプロジェクト終了を迎えてしまった。
「正直、手応えがなく、モヤモヤが残りました。仕事では明確なゴールがあって、いつまでに何をすればいいかわかります。参加する人も、それぞれ役割がはっきりしていて、淡々と役割をこなすことができれば、おのずとゴールに到達する。でもこのプロジェクトは、さまざまな想いやバックグランドを持つ方が集まっているため、仕事のようにわかりやすい役割分担や、あらかじめ共有しているゴールがありません。『なんだこれは! 価値観が全然合わない!』と思いました」
「私って冷たい人なのかしら」
消化不良だった竹田さんは2018年にもプロジェクトに参加することにした。「もう1回やってみたら、あのときのモヤモヤが何だったのか、わかるかもしれないと思ったんです」
2度目に参加したのは、“すべてのアフリカの人々へ健康と笑顔を”を掲げ、置き薬によって、特に都市から離れたアフリカの農村部の家庭により良い医療を届けるために活動する、認定NPO法人AfriMedico(アフリメディコ)のプロジェクト。資金基盤を強化するため、団体の認知を高め寄付者を増やすことを目指して目標数値を設定し、ホームページの改善案をまとめたり、Facebook広告を打つなどの計画を立てて実行した。
「1回目のプロジェクトと比べると、ゴールも明確に定まり、最終的に目標数値には届かなかったですが寄付者も増やすことができた。いろいろなバックグラウンドや価値観を持つ方と議論ができて楽しかったですし、今も関係は続いていて、参加して本当によかったです。けれど……」
「アフリカにより良い医療を届けたい」という熱い想いを持った団体の方々が活動している様子を目の当たりにしたプロジェクトメンバーの中には、プロジェクト終了後に団体のメンバーとなり、活動を継続する人もいた。「でも、そこまで強い気持ちにはなれない自分がいたんです」
社会課題には関心がある。それぞれの団体で活動する人たちは心から尊敬でき、また想いにとても共感するけれど、貧困、病気、環境など、特定の分野にのめり込めるわけではない。「『私って冷たい人なのかしら』と考え込んだりもしました」と振り返る。
そんなとき、二枚目の名刺の事務局から、「今度は、二枚目の名刺のプロジェクト・デザイナーの立場で、プロジェクトに参加しませんか?」と声がかかった。