体の変調や副作用……。闘病生活を陽気につづる理由

そのブログのタイトルは「ハッピーな療養生活のススメ」。38歳で子宮けいがんが見つかり、2度の手術と抗がん剤治療を受けた後、腸閉塞へいそくで緊急手術の末に人工肛門となり……と波瀾万丈な体験を顧みることから始まる。

フリー写真家、執筆家 木口マリさん
フリー写真家、執筆家 木口マリさん

さぞ過酷な闘病記かと思えば、〈その間、不幸だったかというと、案外そうでもありません。もちろんつらかったり落ち込む時はありましたが、楽しいことも多かった気がします〉と。抗がん剤の副作用や体の変調と向き合いながら、脱毛時におしゃれを楽しむ姿、治療中に出会った人たちとの交流など飾らぬ日常がどこか陽気につづられていく。筆者の木口マリさんはどんな思いでこのブログを書いていたのだろう。

「がんになったことで、自分の命の限度をすごく感じました。だから、生きているだけでハッピーだと思って。朝、目覚めたときに体がどこも痛くないとか、気持ちよく眠れたとか、普通に暮らせることがうれしいと思えるようになったんです」

写真家をめざしたのは33歳。本当にやりたいことをしようと貿易商社を辞めて写真学校へ。翌年からフリーランスとして出版社で働き始めた。泊まり込みの作業もこなし、「無理の利く体」だと思い込んでいた。