新聞記者は文章のプロだ。だが、記者のツイートがバズるとは限らない。HONZ代表の成毛眞氏は「記者は物事をロジカルに説明する訓練を受けてきた。だが、SNSで必要なのは、ロジックよりも1行で人を引きつけるノウハウだ」という――。

※本稿は、成毛眞『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)の一部を再編集したものです。

パソコンでソーシャルメディアを使用する人
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「面白い文章」と「ロジカルな文章」は別もの

文章とは本来テクニカルなものだ。元から文章が天才的にうまい人もいるが、テクニカルなものである以上、テクニックを磨けば誰でもうまくなれる。

「うまい文章」というのは、ひと言でいえば「面白い文章」だ。

面白いから多くの人の目を引き、リアクションを起こさせ、結果としてバズる。そういうことだ。

さらに重要なことに、こうした「面白い文章」と「ロジカルな文章」とはまったくの別ものなのだ。

物事を理路整然と説明していて、面白くない文章というのも、世の中には山ほどある。

たとえば学者や新聞記者は、物事を理路整然と説明する訓練は受けている。彼らはそれが本分なのだから当たり前だ。しかし、その職業的文章力をSNSにそのまま持ち込んでもまったくバズらなかったりする。理由は言うまでもないだろう。面白くないからだ。

では、なぜ面白くないか。ひと言でいえば、SNSで読まれるという前提意識が不十分だからだ。ロジカルに説明することには神経を注いでも、読む人を意識して面白く語る意識が欠けているのである。

新聞記者のSNSがつまらない理由

たとえば、記者がネット記事をシェアしている投稿がある。ところが、その投稿内容が面白くないために、記事のリンクをクリックする気になれない(それどころか、投稿自体を最後まで読む気にもなれない)。おそらく、あなた自身もこうした投稿に出くわした経験があるだろう。

記事をシェアする投稿の目的は、もちろん記事をクリックして読んでもらうことだ。そのために書く投稿内容は、読者を記事へと誘導する「魅力的なリード文」でなくてはいけない。

しかも発信の舞台は、ひっきりなしにいろんな人の投稿が流れてくるSNSだ。見た人に一瞬で「おっ?」と思わせることができなければ、目に留めてもらえない。となると重要なのはロジックよりも1行で人を引きつけるノウハウということになるだろう。

こういう例に限らず、SNSにロジックはいらないといっていい。

SNS上でバズる文章とは、ロジックありきの論文や記事の類いよりも、じつは一見とりとめのない「エッセイ」に近いものなのだ。

そして誤解を恐れずに言えば、エッセイはじつは文章のアマチュアのほうが伸び代は大きい。

普段ロジカルなものを書いている人だと、SNSで発信するときにもついロジカルな頭が発動してしまう。一方あまり書き慣れていないならば、文章を書く頭がまっさらなぶん、エッセイ的な素養を後天的に身につけやすいのだ。

POINT
・投稿の書き出しは「魅力的なリード文」にする。
・論理的な文章より、気軽なエッセイのほうが拡散しやすい。
・書きなれていない人のほうがエッセイの素養を身につけやすい。